塵手水（ちりちょうず）を切る妙義龍（23年11月26日撮影）

　日本相撲協会は24日、最高位は関脇で西十両9枚目の妙義龍（37＝境川）の引退と、年寄「振分」の襲名を発表した。秋場所は左膝痛で全休。13年ぶりの幕下転落が確実となっていた。秋場所中も朝稽古で白まわしを着けて汗を流すなど、最後まで本土俵復帰を目指したが、かなわなかった。 　三役在位は13場所で金星は6個（白鵬2、日馬富士2、鶴竜1、稀勢の里1）獲得した。6度受賞の三賞は全て技能賞と、真っ向勝負の鋭い立ち合いに加え、おっつけ、もろ差しなどのうまさにも定評があった。三役の常連だった9年前には、サントリー「伊右衛門　特茶」でテレビCMに初出演。筋骨隆々の体形は、隣に立つやせ型の一般男性を下回る、体脂肪率22％でお茶の間を驚かせた。4月の春巡業の際には「体脂肪率は変わらない」と、場所中に申し合いを重ねる当時から変わらない猛稽古で、体形維持を明かしていた。 　その春巡業では、東前頭15枚目だった直前の春場所が6勝9敗に終わり、6年ぶりの十両転落を覚悟し、思いの丈を語っていた。 　妙義龍　「どこを痛めているわけでもないのに、感覚が昔と違う。絶好調でやって、先場所の成績やからね。十両で長く相撲を取るつもりはない。顔も合ったことのないやつとやって、一喜一憂できるかな…」。 　埼玉栄高から日体大に進み、幕下15枚目格付け出しで09年夏場所、初土俵を踏んだ。所要4場所で新十両に昇進したが、その場所で左膝の大けがを負った。4場所休場し、三段目から出直しとなった。だが復帰した10年秋場所で三段目優勝すると、十両も連続優勝で2場所で通過するなど、強くなって帰ってきた。高校の同級生でもあった同部屋の大関豪栄道とともに、白鵬や同学年の稀勢の里ら横綱とも熱戦を繰り広げた。ライバルたちとの思い出が濃密だからこそ、思うように力が出ない現状に歯がゆさをのぞかせていた。今後は尊敬する境川親方（元小結両国）の右腕として、境川部屋で後進を指導。気迫あふれる取り口を受け継ぐ「第2の妙義龍」の育成が待たれる。【高田文太】