Yahoo!ニュース

IDでもっと便利に新規取得

ログイン

土地柄が幸い…全国でも珍しかったペット霊園が檀家獲得のきっかけに

配信

  • この記事についてツイート
  • この記事についてシェア
日刊ゲンダイDIGITAL

【牛次郎 流れ流され80年】#43  宗教法人の認証を得るために5年間を費やした。最初は都庁、そのあとは文化庁に。訪れるたびに書き直しを命じられた申請の書類は、段ボール箱にして5箱分ぐらいの分量になった。文化庁の担当者には「あんたもしつこいね~」とあきれられたが、めげず、へこたれず、ようやく牛次郎を管長とする新しい宗教法人として認められたのだ。  もっとも、新しい寺院なので、寺を支えてくれる檀家もいない。新しく獲得しようにも、昔からの住民はすでにどこかの寺の檀家になっている。これではお布施も集まらないし、必要な時に寄付を募ることも難しい。苦労して認証を得たからといって、寺院経営を軌道に乗せられるとは限らないのだ。  一時は、自分と同じように中高年になってから仏教に触れ、その哲学や世界観を学びたいという会社員などを集めて講義を行ったりもした。出家得度し、坊主として第二の人生を歩む手助けをしようという考えだ。  ただ、これは「本気で坊主になるまで勉強しようという人はあまりいなくて、長く続かなかった」と振り返る。  幸いしたのは、伊豆という土地柄だ。あちこちに別荘が点在している。 「しかも軽井沢と違って、同じ別荘地でも伊豆は通年でいられる。冬は東京なんかよりも暖かいぐらいだ。だから別荘を持っている人は、定年になると、ご夫婦でそこに住むんだよ。でも息子たちは孫も含めて、仕事や学校があるから東京にいる。そうするとみんな寂しいからペットを買うんだよ」  ただ、何年かして亡くなったときに困った。敷地内に埋められるスペースはないし、どこかで勝手に焼くわけにもいかない。 「で、どこかに埋めてくれって、持ってこられたんだよ。でも、そのまま埋葬するわけにもいかないから困っちゃって、仕方なしに炉をつくったんだ。それでペット用の霊園も用意した。当時は全国的にも珍しく、伊豆では一番早かったんじゃねえかな」  大きいのも小さいのも、何体ものペットたちを焼いてきた。 「もうね、焼きの名人だよ。棒を一本使って、まだ焼けてないところがあれば、くるって回して位置を変える。人間も同じだろうなって思うよ。さんざっぱら見て、いい勉強になった。でも、そのうち消防署から待ったがかかったんだ。長く住んでると周りのヒノキも大きくなってきて、煙突の熱気が当たるようになる。煙とか炎じゃないよ。でも、それで木が燃えることもあるんだっていうんだな。山火事になったらしょうがねえ。かといって、そこらへんの木を全部抜いちゃうと土砂崩れが起こるから、もうどうしようもない。炉は今もあるし、いつでも稼働できるんだけど、火事は起こしたくないからやめたんだ。まあ、今はほかにもできているから、もう役目が済んだからいいかなって、新しく引き受けてないんだ」  ペットの埋葬は檀家の獲得にもつながった。=つづく (取材・文=二口隆光/日刊ゲンダイ)

【関連記事】