「ロシア革命」から100年 世界に今も問いかけるものは?
■その後のソ連:第二次大戦から東西冷戦終結
スターリンの下で近代化を進めたソ連は国外との取り引きを制限したため、1929年の世界恐慌の影響をほとんど受けませんでした。力を蓄えたソ連は、第二次世界大戦で米英とともに主要戦勝国となり、超大国の座に登り詰めたのです。 しかし、スターリン時代に構築された、ギガント・マニア(巨大狂)と呼ばれる、需要に必ずしも適応しない重厚長大型の経済システムは、冷戦下での米国との核軍拡競争とも相まって国家財政を疲弊させ、1989年の「冷戦」終結、1991年の「ソ連」崩壊へとつながりました。つまり、国家主義的になり過ぎたことはソ連経済の破たんを加速させたといえます。 ただし、ソ連という「実験」は失敗したものの、それは資本主義が万能であることを意味しません。社会主義、共産主義が台頭した19世紀と現代は、資本主義のもとで貧困や格差が広がる点で共通します。ブラック企業や過労死が広くみられる日本でも、「労働者の搾取が資本家の蓄財と技術発展を生む一方、労働者の窮乏化を生む」というロシア革命の問題意識そのものは、いまだに生命力を失っていないといえるでしょう。
----------------------------------- ■六辻彰二(むつじ・しょうじ) 国際政治学者。博士(国際関係)。アフリカをメインフィールドに、幅広く国際政治を分析。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、東京女子大学などで教鞭をとる。著書に『世界の独裁者』(幻冬社)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、『対立からわかる! 最新世界情勢』(成美堂出版)。その他、論文多数。Yahoo! ニュース個人オーサー。個人ウェブサイト