相次ぐ水害と過疎化対策に「住まい方改革」を
「列島改造論」から「住まい方改革」へ
かつて田中角栄元首相は「日本列島改造論」という大きなビジョンを掲げて国民の人気を博した。たしかに新幹線や高速道路や大きな橋梁など、土木的インフラ建設は高度成長の牽引力であった。しかしこのビジョンが、そのあとの少子高齢化による人口減少とマイカーから公共交通へのシフト、という時代に耐えうるものであったかどうかは疑問である。にもかかわらず、このところ日本は、再び土木的インフラ建設によって景気浮揚を図ろうとしているのだ。あとの世代には膨大なツケが残される。 新しい時代における新しいビジョンが必要だ。 異常気象による水害の多発、東京集中と地方の過疎化、少子高齢化と人口減少といった条件と、進歩する建築技術の条件を総合すれば、そこに本格的な「集合居住」による都市集約すなわち「住まい方改革」という概念が浮かび上がる。もちろん煩瑣になるのでここでは書けないが、それでもこの類いまれな木造建築文化を維持する道は残されている。 安倍政権は「働き方改革」を進めてきたが、もう一つ「住まい方改革」に着手してから退いてもらいたい。 それが情報産業とは異なる新しい価値分野を開拓し、日本経済の再建にもつながるような気がするからである。かつての日本丸には、西欧文明・近代文明というハッキリしたビジョンがあり、先進国に追いつき追い越すという海図があった。今の日本丸は、そのビジョンもなく、海図もなく、蛇行を続けている。