こだわり派の豪邸建築家・堀内雪さんが選んだ「世界一の豪邸」はメキシコの巨匠ルイス・バラガンによるピンク壁の傑作!
敷地のポテンシャルを見抜く審美眼と徹底した美意識から生み出される唯一無二の建築空間で、住み手に期待以上の住空間を提供し続けている建築家の堀内雪さん。そんな堀内さんが選んだ「世界一の豪邸」とその理由をお聞きしました。 【写真でチェック】建築家・堀内雪さんが憧れる「世界一の豪邸」
堀内雪さんが選んだ”世界一の豪邸”は「サン・クリストバルの厩舎 / フォルク・エゲルストーム邸」(メキシコ)
「エレガントな車と豪邸は似合いますが、馬と豪邸もまた、なんともほのぼのとして素敵だと思います。 大好きなピンクの壁が水平に伸び、水のブルー、大地の茶色、繁る緑、鮮やかなメキシコの色彩が巧みに展開していくこの建物は、人と馬などの動物がそこで共に暮らすために、バラガンが創りあげた厩舎と住宅。 メキシコの強い光が、建物のストイックなフォルムと鮮やかな色彩に陰影を与え、空間には独特の静けさが宿っています。一歩そこに踏み込むと、美しい物語のなかに迷いこんだような感覚にとらわれる、唯一無二な世界一の豪邸だと思います」
バラガンの代表作の1つとして有名な「サン・クリストバルの厩舎 / フォルク・エゲルストーム邸」は、サラブレッドの繁殖とトレーニングを専門に行う一家のために設計された厩舎と住宅。 日本ではCMのロケ地としてテレビ放映されたこともあり、その存在を知る人が多い名作です。印象的なピンクの壁はブーゲンビリアに由来するとか。 馬が水を飲みやすい水深でつくられたプールやゲートの高さなど、住み手はもとより、家族の一員でもある愛馬たちのことも考慮された設計が、自身も馬好きだったというバラガンらしい配慮も相まって独特の雰囲気を醸し出しています。
設計者はメキシコが誇る現代建築の巨匠ルイス・バラガン
ルイス・バラガン(1902-1988)は、メキシコのグアダラハラ出身。1923年にグアダラハラ自由工科大学を卒業した後、メキシコシティに拠点を移します。 カラフルで大胆な色彩、水や光を取り入れた建築で没後も世界各国にファンの多い建築家です。都市計画家として住宅開発も多く手掛けました。1976年にはニューヨーク近代美術館で回顧展が開かれ、1980年プリツカー賞を受賞。自邸兼アトリエのバラガン邸は、2004年にユネスコの世界遺産に登録されています。
堀内雪さんにとっての「豪邸」とは?
「“そこにいるだけで幸せを感じることができる妥協のない住宅”が豪邸。緑、風、光、水のせせらぎ、いきものの気配や温かさが心地よい音楽のように、豊かに心に響いてくる。日常から大きく解き放してくれる、ダイナミックな仕掛けのある空間ともいえます」