底突きかけの積立金 雇用調整助成金の財源をどう確保する?
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う、緊急事態宣言の発令によって、飲食店を中心に雇用が悪化する懸念が高まっています。政府は昨年以降、社員を休業させた企業を支援するため、雇用調整助成金の上限額引き上げなど特例措置を実施しており、雇用の維持に大きな役割を果たしてきました。今回、宣言が再発令されたことから、政府は特例措置を2月以降も延長する方向性で検討を重ねていますが、積立金が底を突きかけており、財源をどう確保するのかが緊急の課題となっています。
雇用調整助成金は雇用保険の制度のひとつで、事業活動の縮小を余儀なくされ、社員を休ませた場合、社員に支払う休業手当の一定割合を助成するというものです。今回のコロナ危機では、1人1日当たりの助成金上限額を8370円から1万5000円にしたり、助成率を中小企業については最大100%に引き上げるなど、特例措置を実施しています。その結果、企業の倒産件数はコロナ前を下回っており、雇用の維持に一定の効果を発揮していました。 今回、緊急事態宣言の再発令が決まり、飲食店を中心に休業を余儀なくされる事業者が増える可能性が高まっています。また、1月8日には、大企業の一部(1都3県の飲食業など)の助成率引き上げが発表されました。政府は、引き続き、雇用調整助成金を活用したいと考えていますが、ここに来て財源という大きな問題が立ちはだかっています。 昨年は雇用調整助成金については220万件以上の申請があり、金額ベースでは2兆5000億円以上が事業者に支給されました。雇用調整助成金は雇用保険制度の一部ですから、基本的な財源は事業者から徴収する雇用保険の保険料(年間約6000億円程度)ですが、保険料だけでは巨額の休業支援金をカバーすることはできません。 政府は雇用保険の資金を管理している労働保険特別会計雇用勘定の積立金からの受け入れ、一般会計からの繰り入れなどで予算を確保していますが、2021年度の概算要求の段階で積立金は約1兆7000億円しかありません。このままでは雇用保険の制度が維持できなくなりますから、政府は別の財源を確保する必要に迫られています。 基本的には一般会計から繰り入れるしか方法はなく、経団連など経済界も一般会計の負担拡充を求めている状況です。一般会計からの繰り入れとなった場合、財源は国債の増発となる可能性はかなり高いでしょう。 (The Capital Tribune Japan)