4.3再開を目指すJリーグが固めた「選手に陽性反応者が出た場合」の対応マニュアルとは?
A4版で8ページにまとめられた提言では、6つの章のうち第3章が「選手・関係者への対応」に割かれた。そして、選手に陽性反応が出た場合は入院もしくは自宅療養、濃厚接触者も自宅待機の形で隔離したうえで、原則的にチーム全体の活動は停止しない方針が示された。抜粋すると次のようになる。 <その他の選手やチーム関係者は原則、チームの動きに従い、チームは予定通りに試合・練習をする。チーム全体の活動はこの時点では停止しないが、検温等の健康チェックをより厳正に実施する> 濃厚接触者の定義に関しては、第1回会議からさまざまな議論が重ねられてきた。議事録には「難しいが、重要な部分」として、選手の家族に言及した舘田教授のコメントが記されている。 <一人でも陽性になったらチーム全体が機能しなくなり、リーグ戦の継続自体が危うくなる。だからあらかじめの対応が必要となるが、チームを管理するのは比較的やりやすい。難しいのは家庭に帰ったときに、家族が同じように徹底できるか。家庭を含めた全体として、選手の発症を抑えていけるか> 提言では家族から陽性反応が出た場合も選手と同様の扱いとなり、濃厚接触者となる選手および関係者は自宅待機することが求められた。専門家チームの座長を務める賀来特任教授は、2時間以上におよんだ第3回会議のなかで、濃厚接触者の定義に幅をもたせたことを明らかにしている。 「チームのなかから陽性反応者が一人出たら全員が濃厚接触者となり、自宅待機となるのか、という点については個々のケースで考えていこう、ということになりました」
プロ野球およびJリーグのチームがすぐに相談できる環境を整えるために、専門家チームの3人に加えて、感染症研究を専門とする5人の大学教授が地域アドバイサーとして任命された。そのうえで最悪の事態を避けるために、選手および組織に感染予防対策を求めていく。舘田教授が言う。 「それぞれの選手が行動や、あるいは濃厚接触の記録を日記のようにつけていって、もしもその選手から陽性反応が出たときにすぐに振り返り、どのような人に広がっているリスクがあるのか、ということを常に確認できる状況にしておくような対策が今回の提言のなかでは求められています」 他の対策として、起床直後や就寝前などの定期検温で37.5度以上が計測された場合は必ず報告することや消毒用アルコール剤による手指衛生の励行、ロッカーやシャワールームなどの時間差使用や最大で2メートルの間隔が取れる空間遮断、そして日々の過ごし方として「同じポジションの選手が可能な限り行動をともにしない」ことが、チームを守るための工夫となりうるとも綴られている。 Jリーグは続けて臨時理事会を開催。当初再開を予定していた今月18日のリーグ戦を含めて、3月いっぱいの公式戦69試合を延期することを正式決定した。9日の「新型コロナウイルス対策連絡会議」の第2回会議で専門家チームから助言され、その日のうちにJ3までを含めたすべてのクラブと合意に達していた再延期を、この日が船出となった、新メンバーを含めた理事会に諮った。 臨時理事会に先駆けてJ1・J2・J3の臨時実行委員会もウェブを介して開催。選手に陽性反応者が出た場合の対応として、情報を即日開示する方針を固めた。村井満チェアマンが言う。 「プライバシーを守るという観点もあるので、いまは氏名公表などについては決めていません。再開後にスタジアムで感染者が出た場合についても、どこのゲームで、どこの座席のあたりで発症したかというところまでを、お客様を守るために開示していこうということは申し合わせています」 すでに延期が決まっていた94試合と合わせて、これで公式戦163試合が4月以降にずれ込むことになる。臨時理事会での正式決定を受けて、湘南ベルマーレなど、数日間のオフを設けたチームもある。先が見えない状況に対して、心身両面でストレスと疲労が溜まっているためだ。