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トランプ氏の白人至上主義は米国黎明期の負のレガシー、奴隷制から現代を振り返る

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The Guardian

【執筆:Toure】  1619年に奴隷制が生まれた頃から、ドナルド・トランプ大統領が治める現代の米国にタイムスリップしたと想像してみてほしい。テクノロジーの変化はさておき、人種問題をめぐる状況は非常に似通っていると思えるはずだ。トランプ大統領の白人至上主義も極めて普通に思えるだろう。現代の米国の人種差別主義は、欧州の入植者たちが取り入れた考え方だからだ。トランプ氏に続く道は、米国の黎明(れいめい)期から始まっている。  1619年、20人以上のアフリカ出身者が人身売買によって強制的にバージニアに連れて来られ、新世界で、欧州の入植地を無償で建設する運命を担わされた。それ以降、さらに多くのアフリカ出身者が到着して奴隷として働かされる中、奴隷貿易保護のために障壁を設ける必要性が生まれ、1705年、バージニアでは法律が制定され、奴隷を所有していない白人たちが奴隷のパトロールとして配備され、脱走ルートの取り締まりを命じられた。  この法律により、貧しい白人の入植者は奴隷にされたアフリカ出身者より上の社会的地位を手に入れ、このことは白人たちが奴隷制を支持する明確な理由となった。富裕層が実際にしたことは、自分たちの所有地を守るために貧しい白人を自警団に仕立て上げることだったのだが、人は、社会的身分を欲しがるあまり、それを手に入れるためなら何でもする。これはまさにトランプ氏を大統領に押し上げた、他者を見て自分の立場を決める「人種の日和見主義」にほかならない。  トランプ氏が人心を掌握した主張は、米国で白人の貧困問題を生んだのは、一般市民より利益を優先する富裕層ではなく移民であり、移民たちは、国民の職を奪い、国家の中心を脅かしているというものだ。  奴隷制が続いていた時代、白人が罪を犯すと、新聞は個人の問題として報じ、その一方でアフリカ出身者が加害者になると人種全体を代表しているように書き立てることが多かった。そのため、黒人の過ちは人種に備わった異常性とされ、白人の犯罪は個人の過失と見なされた。現代米国でも、これとまったく同じことが起きている。  しかし米国に到着した最初のアフリカ出身者たちの物語は、畑で労働し、米国で生まれたすべての音楽のルーツとなる奴隷の叫びを歌にしたことだけでは終わらない。奴隷にされた人々は、この物語において単なる従順な駒(こま)ではなかった。当初から黒人奴隷たちは反撃、逃走し、奴隷制に立ち向かっていた。  米ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)の元QB、コリン・キャパニックもそうだ。キャパニックはアフリカ系米国人に対する警察の暴力行為への関心を高めるため、国歌が流れる間、膝をつく平和的で静かな抗議を行った。その結果、各方面から敵意を向けられ、トランプ氏からもたびたび攻撃され、NFLでのキャリアも失った。キャパニックのメッセージを無視する代わりに多くの人々が議論し始めたのは、なぜ彼は国歌を歌わずに抗議しているのか、けしからんということだった。  キャパニックをはじめとするアフリカ系米国人が訴えているのは、警察の暴力行為は看過できない非常に深刻な問題であり、頼むから自分たちを殺さないでくれということだ。それに対して多くの白人NFLファンは、黙って自分を楽しませろと要求している。  米国は、400年前に引かれた人種の線で分裂したままだ。1619年にそうだったように、今なお人種差別国家だ。それゆえにトランプ大統領の主張は、同氏だけに限った逸脱行為ではない。同氏の考えも力も、最初から米国の一部だった。米国の醜い部分を表してはいるが、それでもトランプ氏は米国の一部なのだ。  筆者のトゥーレ氏は文化評論家。【翻訳編集】AFPBB News 「ガーディアン」とは: 1821年創刊。デーリー・テレグラフ、タイムズなどと並ぶ英国を代表する高級朝刊紙。2014年ピュリツァー賞の公益部門金賞を受賞。

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