日本人に知ってほしいサステナビリティの本質
グローバルの舞台で、かつてあったはずの輝きとプレゼンスが日本から失われているのはなぜなのか。そして、そこから脱却するためには何が必要なのか。 政府、企業、市民社会、専門家との連携を通じ、テクノロジーを最大限に活用して社会課題を解決するための必要なルールづくりと実証を推進する「世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター」。その初代センター長を務める須賀千鶴が、日本を代表する各界の知識人に真正面から問いかけて議論していく対談シリーズ第7回。 【写真】複数の有力企業で社外取締役を務める小林いずみさん
数年前から欧米でトップアジェンダとして挙げられていたサステナビリティ(持続可能性)の議論は、日本でも周回遅れでありながら、課題として徐々に取り上げられるようになった。一方、日本で扱われる、サステナビリティの議論の対象は、依然として非常に狭いのが現状だ。さまざまな問題が複雑に絡み合うサステナビリティについて、あくまでフェアな立場から、地に足のついた議論を展開する数少ない日本人である、小林いずみさんと議論を行った。
■サステナビリティは「気候変動」だけではない 須賀 千鶴(以下、須賀):サステナビリティの議論について、地に足のついた議論をされている方は非常に少ないように感じますが、小林さんは、伊藤邦雄さんを座長とした『伊藤レポート』での議論も含めて、とてもフェアな立場を示されています。菅政権に変わってから、日本でもサステナビリティという言葉は頻繁に聞かれるようになりましたが、小林さんのサステナビリティについての見立てをお聞かせください。
小林 いずみ(以下、小林):政権が変わったことで、グローバルのトップアジェンダである、サステナビリティが、日本でも、表面的には重要なアジェンダの1つになったと思います。ただ、実態としては、議論の対象の広さがグローバルとはまったく異なっています。日本は、サステナビリティというと、気候変動や環境破壊などの話だけにとどまってしまいますが、実際はそうではありません。 例えば、気候変動の問題についても、単に地球と生態系をめぐる話であるだけではなく、資本主義や格差の問題から生じるグローバル規模な人権問題でもあり、「ダイバーシティ」や「インクルージョン」「平等」といった問題にも密接につながっています。パンデミックについても言えますが、自然災害や環境汚染の問題も、開発の進んでいない国や所得の低い人々がより被害を受けやすい格好になっています。