セ新人王の2位票「阪神・大山49票」「横浜DeNA浜口27票」を巡りファン疑問
ちなみに前回、新人特別賞が贈られた2013年のセ・リーグの新人王もハイレベルの争いで16勝4敗、防御率2,93のヤクルトの小川泰弘が252票を獲得して新人王を獲得した。13勝6敗、防御率、3.12の巨人の菅野智之と10勝6敗、防御率、2.75の阪神の藤浪晋太郎に揃って新人特別賞が贈られたが、このとき菅野は13票で藤浪が8票。ファンが疑問に思うような票が他の誰かに入ることはなかったのである。 繰り返すが、新人王に「打者ならこう、投手ならこう」というガイドラインはない。規定打席、規定投球回数のクリアが、一応の目安なのだろうが、それも絶対的なものではなく、毎年、相対的に見て、「最も活躍した選手」を選ぶことになっている。あくまでも、記者それぞれの主観、価値観で選出されるので、価値観の違いで、バラつきが生まれるのは避けられない。 その証拠に過去、新人王の満票は、木田勇(日ハム)、槙原寛己(巨人)、藪恵市(阪神)、和田毅(ソフトバンク)の4人だけで、打率.304、31本を打った1986年の清原和博(西武)、18勝8敗で投手4冠、沢村賞まで獲得した1990年の野茂英雄(近鉄)でさえ満票ではなかった。 今回、浜口に投票したというある記者は、「京田は結果を出したが中日は下位。チーム貢献で言えば3位に入った横浜DeNAの浜口」という投票理由を教えてくれた。これもひとつの価値観。投票締め切りは、日本シリーズ開始までで、あくまでも「シーズンで最も活躍した選手」を選ぶ賞だが、印象度としては、CSでの活躍も加味されたのだろう。 また「トータルの数字より、あの1打、あの1球」という印象度を重要視する向きもある。大山は、最近、球界に、なかなか出てこない和製大砲候補。その部分を「特別」と評価する見方があってもおかしくない。 しかし、それらの価値観のバラつき加減にも許容範囲があるのではないだろうか。 大山の49票と浜口の27票の22票差には、やはり違和感を覚える。 何人かに意見を伺ったが、ある球団のOBは、「大山は大器だが、野球は記録のスポーツ。記録というものをひとつの価値観に置き換えれば、大山の49票はありえない。関西の記者がこぞって入れたのだろう。《自分が普段一番見ている選手の中から選ぶ》という手法は間違っているし、どれだけ真剣に吟味したか、記者の見識を疑う」と怒りをにじませていた。 確かに投票に地元選手を応援するという地域性が見られることも確かだが、今回の49票が本当に関西の記者がこぞって入れたのだろうか、という疑問がある。あくまでも推測に過ぎない。 新人である大山の取材に回される虎番記者は、若い記者が多く、まだ5年以上の投票資格を得ていない。ある虎番記者に聞いてみたが、「まるで49票がすべて虎番、関西記者だろう? みたいな目で見られているが、いい迷惑だ。僕の周囲の記者で大山に入れた人は見当たらない。虎番記者は、逆に厳しい見方を阪神の選手に対してしている」と、虎番記者の組織票説を否定した。 実際、投票権を持っているのは、何もスポーツ新聞の記者だけではなく、一般紙、通信社、放送各社と幅広い。49票=虎番記者の組織票との推測は危険であり、虎番記者に失礼である。