なぜ西武の今井達也は”鬼門の6回”を克服し今季初勝利をつかんだのか…その裏にZOZOマリン風を利用した”魔球”
好調の井上を打席に迎え、捕手の森はストレートが「バックドア」になって動くことを予想した上で、そのボールを初球に要求した。149キロを表示したそのボールは甘く高めに入ったが、手元で動き沈んだ。井上は強振したが、バットの芯を外し、6-4-3と渡るダブルプレーである。 続く7回も代走・和田に足で揺さぶられて一死一、二塁のピンチを招いたが、藤岡に対して“魔球“を使った。藤岡はカットで逃れようとしたが、ボールが沈み当たらない。スイングアウトである。続く荻野にも、その「バックドア」を投じてセンターフライに打ち取った。今井は、98球で立派に先発の役割を果たし、平良-増田の「勝利の方程式」にバトンタッチ。チームは完封リレーで連敗を3でストップした。 ヒーローインタビューに呼ばれた今井は、「勝ちがついていなかったので1勝目を早く欲しいなとずっと思っていました」と、3試合目にしての初勝利に心から表情を緩めた。 そしてロッテ打線にゼロ行進を続けさせた“魔球”について、こう説明した。 「今日は風がとても強かったので、変化球の曲がりがいつも以上に大きくなったり、シュート回転の真っすぐが動いて、いい方向に働いた。風に助けられたところがあったと思います。(4回二死から中村を三振に取った球は)あれも実はストレートを投げたら(風の影響で)あのように変化しました」 3者凡退に終えた4回には二死から中村を三振に取っているが、「バックドア」に見えた、そのツーシームもストレートが風で変化したものだったという。 ZOZOマリンの風は、上空でどの向きに吹いていようと、グラウンドレベルでは、バックネットに当たって跳ね返り、投手に対して“向かい風“になる。投手は向かってくる、その強風に向けて投げるので、空気抵抗を受けてボールの変化が大きくなる。風の強弱によって変化の仕方も変わるのだが、この日は、シュート回転のストレートが、”向かい風“の抵抗によりツーシームとなって打者の手元で動き沈んでいたのである。 捕手の森は、その変化を計算した上で、左打者のインサイド、右打者のアウトコースに、その”魔球”をうまく配球した。6回には、2号ソロで今井をアシストしている。