漫画で「戦争」描き50年 「僕は僕なりに」沖縄の作家・新里堅進さん
歴史を「幻」にしないために
「戦争はね、負けちゃいけない。負ける戦争はしちゃいけない。沖縄をみてください。広島、長崎をみてください。大陸引揚者をみてください。じゃあ勝つ戦争をすればいいのか。勝つ戦争もしちゃいけない。たとえ勝ったとしても必ず死人がでます。死んだ人の遺族にしてみれば、これは勝ち負け関係ない。息子は帰ってこないんだもん。だから(戦争は)やっちゃいかんですよ。戦争を体験してもう一度やってみたいという人は絶無。もしいたら人の姿をした悪魔以外の何ものでもありません」 インタビューの最後、戦争について語った新里さん。改めて、なぜ戦争を描き続けるのか聞いてみた。
「日本人はね、あの戦争を忘れようとしている。僕はこれじゃいかんと思うんです。記憶は薄れていく。語り継ぐ人がいなくなると、(歴史は)幻になる。沖縄戦ってあったの? って感じなりますよ。本当に。漫画は1つ(の語り継ぐ手段)。せめてこういう形でと、僕は僕なりに残そうと思ったわけです」 今後は沖縄戦に限らず、日本が関わった戦争を広く描いていきたいと意気込む。「ガダルカナルの戦いを皮切りに、インパール作戦など太平洋戦争の様々な戦場を描き続けたい、そのために健康でいたい」 新里さんはきょうも机に向かう。
撮影:山本宏樹/deltaphoto