南海電鉄は地道な経営改善が報われた!? 中間期決算は大手私鉄唯一の営業黒字に
大阪市の難波駅を拠点とする南海電鉄 <9044> が、今中間期、大手私鉄で唯一営業黒字を計上しました。コロナ禍で厳しい経営環境が続いているのは他社と同様ですが、何が南海電鉄の業績を支えたのでしょうか。
今中間期に大手私鉄で営業黒字になったのは南海電鉄だけ
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大による外出自粛要請などで、私鉄各社の業績が悪化しています。その中で、今中間期決算に大手で唯一営業黒字を計上したのが大阪の南海電鉄です。 同社の2021年3月期第2四半期(中間期)決算の業績は次の通り。参考値として前年同期の数値も記します。 ・2021年3月期第2四半期:売上高910億円、営業利益2.5億円、当純利益▲19億円 ・2020年3月期第2四半期:売上高1168億円、営業利益212億円、当期純利益134億円 また、同社のセグメント別営業利益は次の通りです。 ・2021年3月期第2四半期:運輸業▲88億円、不動産業70億円、その他事業合計(調整額含む)20億円 ・2020年3月期第2四半期:運輸業94億円、不動産業76億円、その他事業合計(調整額含む)42億円
鉄道部門は赤字だが不動産事業が好調
関空と難波を直接結ぶ路線を持つ南海電鉄は、昨年まで外国人旅行者による利用で大きな恩恵を受けていました。 しかし、コロナ禍でインバウンド需要は消滅。関空特急ラピートは平日の日中は運休しています。南海難波駅の専用ホームで回送表示のまま、電気もつけずに停車中のラピートの姿には一抹の寂しさを感じざるを得ません。 鉄道部門が属する運輸業のセグメント利益は今期第2四半期で▲88億円の赤字であり、他社と同等もしくはそれ以上に苦戦を強いられています。 しかし、同社は難波駅周辺で展開するなんばパークスなどの不動産事業の好調さもあり、企業グループ全体では営業黒字を維持しました。
長期にわたり関連事業の整理が続いた南海電鉄
私鉄各社は、鉄道事業以外に様々な事業を展開することで事業の拡大を図ってきました。南海電鉄も過去にプロ野球、ホテル、レジャーに加えゼネコン事業まで手掛けています。しかし南海の事業多角化は苦難の連続でした。 たとえば同社はかつて、名監督と謳われた故野村克也氏が現役時代に活躍したプロ野球球団・南海ホークスを保有していましたが、採算的に厳しく1988年にダイエーに売却しています。 そして南海ホークスが本拠地とした大阪スタヂアムの周辺開発を進めようとするも、複雑な権利関係や、1990年代末期の経済情勢に加え、自社の台所事情もあり開発は停滞。 筆者は1999年春に初めて実際の大阪スタヂアムを見たのですが、球団売却からずいぶん経つのにまだあったのか、と驚いた記憶があります。 その球場跡地周辺がなんばパークスとしてオープンしたのは2003年。南海ホークスの売却から約15年の時が経過していました。また、2000年前後はゼネコン不況の影響を受け、グループ内ゼネコンの経営再建に追われています。 さらに、ホテル事業も関空オープンに合わせ南海難波駅直結の「南海サウスタワーホテル」を1990年に開業しましたが、経営不振により2003年4月に撤退。現在はホテルの建物のみをホテルチェーン(スイスホテル)に賃貸する大家(=不動産事業)に徹しています。 なお、つい最近のことですが、大阪府南部ではお馴染みだったレジャー施設・みさき公園を2020年3月末に閉園しています。 このように、近年の南海電鉄の歴史は周辺事業の撤退と再編の歴史といっても過言ではありません。インバウンドの活況もあり何とか立て直しが一息ついたのも束の間、次はコロナ禍への対応に迫られています。