チェルシー蘇生!新指揮官トゥヘル就任後3連勝を支える「64億円ストライカー」
違いを創り出したのは“ドイツ人FWのスプリント”だった。フランク・ランパードに代わってトーマス・トゥヘルを指揮官に迎え、再び調子が上向いてきたチェルシー。2月7日に行われたプレミアリーグ第23節では、アウェイでシェフィールド・ユナイテッドと戦った。 【動画】シェフィールド・ユナイテッド対チェルシー ヴェルナーの折り返しをマウントが叩き込む 最下位のシェフィールドは、新監督が就任して以来3戦負けなしのブルーズに対して、その順位に似合わず果敢な守備を敢行してきた。「5-3-2」の守備ブロックを構築しながら、自陣のボックス付近に引いて固めない。センターラインを跨ぐように中央寄りに構え、前からプレスを仕掛けてくる。 特にシェフィールドの2列目、ジョン・ランドストラム、オリヴァー・ノーウッド、ジョン・フレックの3枚は固く、最終ラインの前を厚く閉ざした。チェルシーのダブルボランチ、マテオ・コバチッチとジョルジーニョは、敵の2トップとその3枚の間でパスを交換することはできたが、そこから先のブロックの間になかなかボールを入れることができない。 パスを出したとしても、2シャドーの一角で先発したティモ・ヴェルナーやワントップのオリヴィエ・ジルーに対するマークは厳しく、ドイツ代表FWはシェフィールドの守備組織の外まで出てボールを貰う時もあれば、フランス代表FWがブロックの間に顔を出しても、パスは出てこない時もあった。 40分過ぎにチェルシーのボール支配率は75%を記録したが、主導権を握った結果とは言い難く、強度の高い敵の守備組織の外側でボールを回さざるを得なかった結果と言えるだろう。
こうした膠着状態を打ち破ったのが、ヴェルナーだ。昨夏、RBライプツィヒから4750万ポンド(約64億円)の移籍金で加入したドイツ代表FWは、左サイドでコバチッチから受けたパスを戻すと、前方に走り出す。そしてコバチッチ→ベン・チルウェルと経由して出てきたボールに合わせて左サイドを抉ると、マイナスに折り返す。そこには、フリーのメイソン・マウントがいた。 シェフィールドの守備の一瞬の隙を突いた生え抜きのイングランド代表MFは、左足を振りぬいて先制点を奪う。もちろん最初にコバチッチからパスを受けた時点のポジショニングが効果的だったこともあるが、何よりヴェルナーのスプリントが、固い守備に穴を空けた。 高額の移籍金で加入したにもかかわらず、リーグ戦で4ゴールに留まっているドイツ代表FWに対しては、現地で批判の声もあるという。だがトゥヘル新監督は、同じドイツ人としてヴェルナーの特徴を熟知していることもあってか、決して悩めるアタッカーを見限るようなことはせず、その長所=スピードを活かせるポジションを見出そうとしている。 現地『スカイ・スポーツ』に語ったところでは、トゥヘル監督はやや左サイドにヴェルナーの適性を見ているようだが、シェフィールド戦ではその考え方が上手くハマったと言えるだろう。 もっとも、ペップ・グアルディオラに多大な影響を受けたドイツ人監督は、ドルトムント時代、それまで主にサイドハーフでプレーしていたピエール=エメリク・オーバメヤンをセンターFWにコンバートしたこともあるので、今後ヴェルナーが完全なワントップのポジションに入る可能性もある。いずれにせよ、同国のトゥヘル監督の指導の下で、ヴェルナーはいよいよ本領を発揮し始めるのかもしれない。 韋駄天のドイツ人アタッカーは、56分には右サイドでバックパスをかっさらい、そのスピードでPKを獲得。直前のアントニオ・リュディガーのオウンゴールを帳消しにする仕事をした。このチャンスをジョルジーニョがきっちり決めて、チェルシーが勝ち越しに成功。その後も抵抗するシェフィールドを振り切って、2-1で勝利した。これでトゥヘル体制になって負けなし、3連勝である。その結果、5位に浮上。 4位以内も視界に入ってきたが、ヴェルナーの足が、来季チャンピオンズリーグの出場権獲得のカギを握っているのかもしれない。
サッカー批評編集部