のろのろ台風10号「こんなに長い停電初めて」…医療従事者、備え万端に「命」守る 自家発電で医療的ケアつなぐ 鹿児島県内
強い台風10号で29日に一時20万戸を超える停電が発生した県内では、多くの患者や利用者を預かる医療機関や高齢者施設も影響を受けた。在宅で医療的ケアを必要とする人や家族は、不安な時間を過ごした。 避難時の人工呼吸器 電源どう確保 個別計画は自治体の努力義務だが…進まぬ把握「まずは自助」 激甚化する災害に危機感
錦江町神川の肝属郡医師会立病院では、28日夜から29日午後3時頃まで停電が続いた。29日は外来診療は休み、台風に備えて受け入れた人工透析の患者らも含む約130人の入院患者には自家発電で対応した。坂上陽一地域医療室長(46)は「台風の規模から数日間の停電も覚悟し、各方面で準備していた。特に被害もなくてよかった」と話した。 鹿児島市平川町の鹿児島赤十字病院は29日明け方から停電し、午後8時半時点で完全復旧には至っていない。入院患者については、自家発電機で対応できているという。 さつま町紫尾の特別養護老人ホーム・アルテンハイム鶴宮園は、29日午前9時過ぎから8時間にわたり停電。接近前から暴風が長時間に及ぶと想定し、発電機をリースして増やし、食事の作り置きも進めた。系列施設を含む84人の利用者に体調不良を訴える人はおらず、湯下吉郎施設長(69)は「暴風がもう一晩続くと考えていた。命を守る施設の務めが果たせた」と胸をなで下ろした。
在宅で医療的ケアを必要とする人や家族にとって、電源確保は命に関わる。「ここまで長時間の停電は初めて」。鹿児島市下福元町の池原京子さん(55)は話す。息子の翼さん(26)は日常的に呼吸器やたんの吸引が必要だが、29日は早朝から12時間以上停電が続いた。機器のバッテリーや蓄電池、発電機を使い乗り切ったものの「携帯がつながらない時間帯もあり不安だった」と明かした。 枕崎市のサザン・リージョン病院は停電は免れたが、透析室の備品庫や緩和ケア病棟で雨漏りが発生。内視鏡室の窓ガラスが割れ、建物の避雷針も折れ、職員は後始末に追われた。法人事務室の内田大介さん(41)は「雨漏りが入院患者のいる場所でなかったのが幸い。台風の常襲地帯だが、今回は特に被害がすごい」と話した。
南日本新聞 | 鹿児島