内川聖一、シーズンの本音と退団の真意「もう一度、1軍の舞台で勝負がしたい。今はそれだけ」
強力ホークス打線の中核を担い続け、昨季まで4度のリーグ優勝、6度の日本一に貢献。まさに球団の黄金時代を築き上げた男は今季、ただの一度も1軍の打席に立つことはなかった。今シーズン限りで10年在籍した福岡ソフトバンクホークスを退団することになった今、内川聖一は何を思うのか。その本音を明かしてくれた――。 (インタビュー・構成=花田雪)
一度も1軍の打席に立てなかったシーズン、内川は何を思うのか
2020年の日本シリーズは、福岡ソフトバンクホークスが読売ジャイアンツを4勝0敗で下して幕を閉じた。昨年に続いてのスイープ劇、日本シリーズ12連勝、ポストシーズン16連勝と“圧巻”としか形容できない強さを見せつけたホークスは、今年も日本プロ野球の頂点に立った。 ただ、その歓喜の輪の中に、内川聖一の姿はなかった。 横浜ベイスターズ(現横浜DeNAベイスターズ)から2011年にフリーエージェント権を行使してホークスに入団。移籍1年目にプロ野球史上2人目となるセ・パ両リーグ首位打者を獲得するなど、強力ホークス打線の中核を担い続け、昨季までの9年間で4度のリーグ優勝、6度の日本一に貢献した稀代のバットマンは今季、ただの一度も1軍の打席に立つことがなかった。 ウエスタンリーグ最終戦となった11月1日には自らの口で、翌2日には球団からも、今季限りでのホークス退団が、正式に発表された。 来季、新天地でのプレーを目指しながらトレーニングを続ける内川は、激動の2020年をどう振り返るのか。その真意に迫った。
「『俺を使えよ』という思いはありますよ。でも、それは……」
「プロ野球選手ですから、もちろん『俺を使えよ』という思いはありますよ。でも、それは僕だけでなく、みんなそう。実際、僕がいない中でもホークスは優勝したわけだし、結果的に『やはり内川がいなければダメなんだ』と思わせることができなかった。その意味では、割り切ることはできているのかな」 2軍の舞台で結果を残しながら、1軍出場が最後までかなわなかった今季を、内川本人はあっけらかんと答えてくれた。 「開幕前、結果が出なかったのは確かですし、周りから『17年ぶりの開幕2軍』とか言われましたけど、『あぁ、そうなんだ』という程度で。自分の中ではしっかりとテーマを持ってやれていたし、焦りや不安みたいなものはありませんでした」 自身も語るように、今季開幕前、内川は不振にあえいでいた。練習試合では21打数1安打。12球団屈指の戦力を誇るホークスというチームにおいて、結果を出せなければ出場機会がなくなることは、誰よりも本人が分かっていた。 「ホークスに来てから、何度も優勝させてもらっていますが、すべての選手が試合に出るために必死にプレーしている。レギュラーも、そうでない選手もです。守備固めでも、代走でも、全員が与えられた役割をしっかりこなす。それが、ホークスの強さなのかなと感じる部分はあります」 分厚い選手層は、そのまま激しいレギュラー争いを生む。結果が出なければ弾き飛ばされるのはプロとして当たり前。だからこそ、17年ぶりとなる開幕2軍も、受け入れることができた。 「単純に自分の力が衰えてきたとか、そういう感覚があったら、もっと違った感情が生まれていたかもしれない。でも、少なくとも今年は自分の中では手応えがあったし、2軍でプレーしていく中で少しずつ良い感覚もつかめていた。1軍には呼ばれませんでしたけど、『まだ、やれる』という気持ちがあったことも大きかったかもしれません」