「阪神大震災でも昨年ようやく終わった」インフラ事業に巨額予算の一方、これからが勝負の被災地コミュニティ・被災者の心の支援は厳しい状況に
東日本大震災からまもなく10年。これまで「復興」に投じられた国家予算は実に32兆円にのぼっている。その使い道のうち、最も多い13.3兆円が、道路建設や宅地開発などのインフラ事業に費やされた。街の再生は人々の暮らしの支えに繋がる一方、正しい使い方ではないのではないか、との疑問の声もある。 【映像】震災復興とお金 巨大防潮堤や高台移転の建設は成功?東電賠償金で“格差“も その一つが、1.3兆円を投じ沿岸部に建設されている400kmを超える巨大防潮堤だ。「避難時間が確保できて、家も命も守れる」「景観が悪くなるし、海が見えないと津波もわからない」と賛否両論だ。
さらに、およそ1兆円を投じて宅地の嵩上げ、高台移転も行われたが、高台宅地の3割は利用されていないという。背景の一つには人口減少もある。震災前の人口と比べ、宮城県女川町では43%減少、南三陸町では37%減小している。 一般社団法人「RCF」代表理事の藤沢烈氏は「やはり過大に使われてしまったところがある。背景としては、地元からの期待もあり、負担が一切ない形になった結果、より良くしたいという想いの一方、人口は減少する。例えば人口が1.3倍になるという前提でプランを作っていた自治体もあった。また、当初は5年、10年とかかるとは思わず、“すぐに戻れる”という感覚でいるが、やはり別の場所で暮らすうちに新しい仕事を見つけたり、お子さんが学校に通い始めたりして、戻るに戻れなってしまうというケースもある」と指摘する。
「災害が起きてから復興計画を立てると、どうしても予測がつかないし、支える側も、何とかより良くしてあげたいという気持ちから、お金がかかりがちになってしまう。“事前復興“という考え方があるが、災害が起きる前に、“この地域はこのくらい人口が減少するから、完全に元に戻すのはやめよう”と冷静に考えておかないと、どうしてもこのような形になってしまう」。
他方、NPO法人「パワーアップ支援室」(岩手県北上市)代表の本舘淳氏は「個人的な見解だが、岩手県においてはハード面の整備については妥当だったと考えている。人も動物も、最も大事なのは命だ。いつかまた起きるかもしれない自然災害によって同じことを繰り返さないためにも、道路整備や高台移転といった整備は必要なものだったと思う。ただ、法制度の面から整備が遅れてしまった結果、生活基盤が整い内陸部に避難したまま移住される方もいて、沿岸部の人口が減少してしまっている」と話した。