なぜいま“異世界漫画”が売れるのか? 普通の漫画と違う「決定的な理由」とは
出版不況に苦しむ出版業界にいま、救世主のような存在が現れている。それが、“異世界漫画”と呼ばれるジャンルだ。 【マンガ】異世界漫画の1つ『その門番、最強につき』第1話を読む 「“異世界漫画”は正にフィーバー状態と言えるくらい売れに売れています。新シリーズの初版はどこの出版社も2万部弱で、某レーベルでは10タイトル新シリーズをスタートさせると、8タイトルに発売即重版が掛かったという話もあります」(出版関係者) さらに、4月にコロナウィルスの流行が拡大すると、巣ごもり消費が伸び、ブームに拍車をかけた。 「紙だけでも十分、高い売上を誇っていたのですが、4月以降は紙の売上を上回る勢いで電子コミックが伸びてきています。売上はまさに倍々ゲームで、月の売上が1000万をこえる作品がゴロゴロと生まれてきている。レーベル全体の月の売上が億を超えるのはもはや当たり前の状態となっています。このブームのおかげで出版不況に苦しんでいた出版社で息を吹き返したところも多く、まさに救世主のような存在です」(前同)
作品の掲載で雑誌の部数が伸びる
いまや、どの出版社もこのブームにのっかろうと、同ジャンルの新規作品の立ち上げに躍起にやっているという。 『週刊少年マガジン』は今年7月から『シャングリラ・フロンティア』という“異世界漫画”の連載をスタートさせた。するとその号は実売が1.5%伸びたという。 では、なぜここまで“異世界漫画”が大流行しているのだろうか。それを解説する前にまず、そもそものジャンルの成り立ちについて簡単に説明していきたい。
“異世界漫画”というジャンルの成り立ちは?
「“異世界漫画”は、異世界という名の架空の世界を舞台に繰り広げられる作品で、主に『小説家になろう』という小説投稿サイトに投稿された、“なろう小説”と呼ばれる作品を原作としています。 “なろう小説”は、2014年ごろから徐々に人気となり、その人気を不動にしたのは2016年にアニメ化された『Re:ゼロから始める異世界』(累計700万部)でした。これが大ヒットとなったことで、“なろう小説”というジャンルが確立された。 しかし、2018年ごろになると、“なろう小説”の人気も下火になっていました。そんなタイミングに、『転生したらスライムだった件』(シリーズ累計2000万部)という作品がアニメ化され、爆発的なヒットを記録。同作品は漫画化もされており、これを機に“なろう小説”が漫画化された作品である“異世界漫画”が、一気に人気となっていったのです」(同)