ソウルの韓国大統領府で2024年12月7日、国民向けに談話を述べる尹錫悦大統領。大統領府提供=ロイター

　韓国の尹錫悦（ユンソンニョル）大統領が出した「非常戒厳」をめぐり、韓国メディアは11日、宣布を建議したとされる金竜顕（キムヨンヒョン）前国防相を検察が内乱などの疑いで逮捕したと報じた。警察が尹氏を容疑者として大統領府の家宅捜索令状を取るなど、尹氏の立件を視野に入れた捜査が本格化しつつある。 【写真】韓国の国会前で、尹錫悦（ユンソンニョル）大統領の弾劾（だんがい）を訴える市民=2024年12月10日、ソウル 　今回の非常戒厳をめぐる逮捕者は金前国防相が初めて。警察も11日、警察トップの趙志浩（チョジホ）警察庁長官や金峰埴（キムボンシク）・ソウル警察庁長官を内乱の疑いで拘束した。 　検察は金前国防相の逮捕状を請求した際、金氏を内乱の「重要任務従事者」としており、韓国メディアは尹氏を内乱の「首謀者」とする捜査が進むとみている。 　韓国紙・朝鮮日報によると、金前国防相は検察に対し、非常戒厳の際の布告令は「私が草案を作成し、尹大統領の修正・削除指示を経た」と述べているという。金氏は逮捕前の10日深夜に拘置所で自殺を図ったが、命に別条はないという。 　一方、警察は11日、大統領府の閣議室などを家宅捜索しようとした。大統領府側は応じなかったが、要求した資料の一部が任意提出された。韓国メディアによると、令状には容疑者として尹氏の名前が書かれているという。 　また、政府高官らを捜査する「高位公職者犯罪捜査処」（公捜処）のトップは11日、国会で尹氏について「状況が整えば緊急逮捕または逮捕状による逮捕を試みる」と述べた。 　捜査は検察、警察、公捜処の３機関を中心に行っている。このうち警察と公捜処、そして国防省は11日、捜査の重複などを解消するため「共助捜査本部」を立ち上げると発表した。 　一方、野党側は尹氏の弾劾（だんがい）訴追案を14日に再び国会で採決にかける構えで、捜査と弾劾手続きによる責任追及が並行して進んでいる。（ソウル＝太田成美、貝瀬秋彦）