「日本で最も過酷な大会」地域CLから見える地域事情 “地獄の関東”“課題山積の北海道”
関西リーグ代表・FC TIAMO枚方と東海リーグ代表・FC刈谷のJFL昇格で幕を閉じた2020年の全国地域サッカーチャンピオンズリーグ。この大会はJFL昇格クラブを決めるだけの大会ではなく、北海道・東北・関東・北信越・東海道・関西・四国・中国・九州の9地域リーグ間の競技レベルや環境が反映される舞台でもある。「日本で最も過酷な大会」といわれる本大会の取材を続けて15年になる写真家・ノンフィクションライターの宇都宮徹壱氏が、「地域」という視点を軸に各地域の実情を考察する。 (文・撮影=宇都宮徹壱)
リーグ戦中止の決断をした東海リーグ
「どこまでも行こう 道はきびしくとも 口笛を吹きながら 走ってゆこう」 小林亜星が1966年に作詞・作曲した、ブリヂストンタイヤのCMソング『どこまでも行こう』。それは、東海リーグ所属のFC刈谷の応援歌でもあった。11月23日に千葉県市原市のゼットエーオリプリスタジアムで開催された、全国地域サッカーチャンピオンズリーグ(以下、地域CL)第3節。第2試合に勝利して今大会2位となり、JFL昇格が決まった時、刈谷の選手たちがサポーターに向かって「どこまでも行こう」と歌い始めたのである。 その歌声を聞いた時、思わず目頭が熱くなるのを覚えた。まず、スタジアムで歌声を聴くのが、2月22日のJリーグ開幕戦以来だったこと。そして、刈谷にとっては12年ぶりのJFL復帰が実現したこと。声を出しての応援は、もちろん地域CLでも禁止事項となっていた。それでもピッチ上の選手たちが、応援してくれたサポーターに向かって応援歌をプレゼントするのであれば、少なくともルール違反とならなかったはずだ。
「日本で最も過酷な大会」といわれる、地域CLを取材してきて今年で15年になる。今年もさまざまなドラマがあったが、そこにエモーショナルな拍車をかけたのが、コロナ禍の影響。全国9地域のチャンピオンが集い、上位2位にJFL昇格の権利が与えられる地域CLだが、今年は多くの地域リーグが半分の日程で順位を決定している。九州リーグは途中で打ち切られ、東海リーグと中国リーグはリーグ戦そのものが行われなかった。 今季の刈谷は、地域CL出場を決めるトーナメントを2試合戦っただけで、出場権を獲得。楽なようにも見えるが「選手の見極めという意味ではウチが最も不利だった」と門田幸二監督は語る。それでも1次ラウンドを2勝1分けで突破し、決勝ラウンドも1勝2分け。無敗でJFL昇格を決めたのは、東海リーグの古豪としての面目躍如というべきか。今年の地域CLについて、本稿では「地域」という視点に軸足を置いて考察することにしたい。