鹿島を凌ぎイニエスタ神戸に次ぐ!Bリーグ川崎のスゴいオンライン戦略(1)YouTube成功の3つの要因
リアルの何倍もの観客をオンライン上で集めていく。そんな可能性に取り組んでいるクラブがある。 【動画】川崎ブレイブサンダース、セドリック・シモンズ選手の豪快ダンク!! それはサッカークラブではなく、プロバスケットボールのBリーグで(新型コロナウィルスの流行前の)昨シーズン、2番目に多く観客を集めた、川崎ブレイブサンダースだ。 1試合平均の動員数は4732人(最大動員数から割り出した1試合平均の収容率は90%)。 試合数も会場のキャパも大きく異なる、サッカー界とバスケ界の観客動員数に差があるとはいえ、サッカー界と比較すれば、その数はずいぶん少ない。 川崎ブレイブサンダースの動員数は、昨シーズンの“J2”にあてはめたとしても、少ない方から数えて2番目になる。 まして、J1とは比較にならないほどの差がある。20751人というJ1の平均動員数の4分の1以下。昨季のJ1で動員数が最少だったサンフレッチェ広島の、13886人のおよそ3分の1だ。 一方で、“不思議な”ランキングが存在する。 JクラブのYouTubeチャンネル登録者数のトップ3のランキングは以下の通りだ(以下、登録者数はいずれも12月23日時点のもの)。 Jリーグ1位 横浜F・マリノス 7.42万人 Jリーグ2位 ヴィッセル神戸 6.27万人 Jリーグ3位 鹿島アントラーズ 4.78万人 実は、Bリーグ1位の川崎ブレイブサンダースは現在、非公開設定ながらも6万人を目指しているところで、Jリーグで3位の規模にあるのだ。 リアルの世界では、J1の平均4分の1以下の動員数の川崎。そんなバスケクラブが、オンラインで大健闘している。 どんな秘密があるのか? 川崎ブレイブサンダースの事業戦略マーケティング部で部長を務める藤掛直人氏に話を聞くと、そこにはスポーツ界のこれからの発展のヒントが眠っていた――。
■29歳のマーケティング部部長が進める改革
「『短期的』には、今は(ウイルスの感染拡大を予防するため)入場制限がかかっている状態なので、会場に来られないみなさんの熱量をしっかり保つこと。『中期的』には、みなさんと色々な接点を作っていくことで、新規にファンになってくださる方が増えていただたらいいなと考えています」(藤掛氏=以下同) クラブのYouTubeチャンネルの目標を藤掛直人氏はそう語る。若干29歳にして、事業戦略マーケティング部の部長を務める彼は、こうも感じている。 「YouTubeやTIKTOKでは、通常の交通広告(駅や公共交通機関の車内に貼るポスター等)などとは違うお客さんにリーチできるかなと思って、取り組んでいます」 2019年春、藤掛氏がまだ27歳だったときに、YouTube改革プロジェクトの中心として白羽の矢が立った。 Bリーグのシーズンは、ヨーロッパサッカーと同じ秋春制だ。新シーズンに向けたチームの活動が本格化する8月から、YouTubeチャンネルのリニューアルをすべく、準備が始まった。 社長から特命を受けた主な理由は2つあった。 1、 藤掛氏の年齢が若かったから: YouTubeのターゲットとなる若い世代と近い感覚を持つ、適任者として声がかかった。 2、 藤掛がスポーツ界の常識に染まって“いなかった”から: 彼は前年の途中まで、川崎の運営母体であるDeNAの本社に勤務しており、スポーツとは直接関係のない仕事で、成果をあげていた。 じっくりと準備した上で、チャンネルのリニューアルを告げた動画は2019年8月3日、新しいシーズンへ本格的に始動するタイミングで公開された。 すると、それまで1本で平均6~7000回、多くてもせいぜい3万再生程度だったものが一気に跳ね上がった(現在は一定時間がたてば20万再生程度をコンスタントに稼ぐ)。 これが起爆剤となった。 チャンネル登録者は、リニューアル前は4000人も満たなかったが、そこから1か月足らずで1万人を突破。2020年に入ると4万人を越え、以降も着実に伸びてきている。現在は人数を非公開の設定にしているが6万人程度になっているという。