ユダヤ人への寛容の念は「消費期限切れ」なのか ホロコーストから70年以上…若い世代で高まる“イスラエル批判”
「ユダヤ人に対する寛容の消費期限が切れた」 イスラエルのニュースサイト「オール・イスラエル・ニューズ」に4日、こんな見出しの論評記事が掲載された。 【画像】世界各地でパレスチナを支持するデモが行われているが… 筆者は、イスラエルの教育者で作家でもある、クッキー・シュウェバー・イッサンさん。イッサンさんは、今回ハマスが殺人やレイプ、斬首、家族全員の虐殺など「ホロコースト以来ユダヤ人に対して最も凶悪な攻撃」を行ったのに、世界の同情がイスラエルではなく、ハマスやパレスチナ人に集まるのは考えられないと疑問を呈す。 その上でイッサンさんはこう考える。 「1948年にイスラエルが建国されて以来公然と『反ユダヤ主義(antisemitism)』を表明するのは『流行らないこと』とみなされてきたのに、ここへきてパレスチナ支持の大規模なデモが世界中で広がっているのは、長年封印されてきたイスラエルのみならずユダヤ人に対する憎悪の念が、今、一気に吐き出されていると考えざるを得ない」 つまり、ユダヤ人に対してはもともとその存在までも否定する「反ユダヤ主義」の考えがあったが、主に西欧の人たちはホロコーストの大虐殺に対する人類全体の贖罪の意味からも、それを封印してユダヤ人に寛容に接してきた。しかし、今回はその封印が破れて、本来の「反ユダヤ主義」が解放され広がったとイッサンさんは考え、それを「寛容の消費期限(shelf life)が切れた」と表現しているのだ。 この「消費期限」という表現には含みがある。売り物の卵がたなざらしになって変質し、食に値しなくなり「期限切れ」になったように、「反ユダヤ主義」の封印も年月を経てほころびが生じて破れたもので、必ずしも今回の戦争のイスラエルの軍事行動で憎悪の念がいっきに高まったわけではないことになるからだ。 ではその「期限」が切れるまではどれほどの年月がかかったのだろうか? イッサンさんは「反ユダヤ主義」が流行らなくなったのはイスラエル建国以来としたが、それなら77年だ。 また「反ユダヤ主義」を封印したきっかけがホロコーストだったとすると、その悲劇を世界に知らせた本「アンネの日記」の初版発行から既に76年が経っている。 長年の月日を経てイスラエル建国の経緯やユダヤ人大虐殺は、歴史書の中の話になってしまったのかもしれない。