【参院選・鹿児島選挙区】21年間議席独占の自民、4期目目指す野村氏「総仕上げ。相手は意識しない」 共闘目指す野党は立民・柳氏と共産・山口氏で候補一本化模索
夏の参院選は公示が見込まれる6月22日まで残り50日となった。鹿児島選挙区(改選数1)は4選を期す自民党現職の野村哲郎氏(78)に、新人で立憲民主党県連代表の柳誠子氏(61)と共産党が擁立する新人山口広延氏(47)が挑む。野党候補者の一本化調整の行方によって構図が様変わりする可能性がある中、熱を帯びてきた前哨戦を追う。 【写真】メーデー鹿児島県中央集会であいさつする柳誠子氏=4月29日、鹿児島市の天文館公園
4月中旬、鹿児島市のJA県会館。「鹿児島はジャガイモや茶など産地が限られる作物が多い。われわれが声を上げねば必要な政策は実現しない」。JA県中央会出身の野村氏は古巣の若手職員約20人との意見交換会で力を込めた。国政に打って出た18年前を振り返り、質問にも気さくに応じた。 後援会長で県農民政治連盟(農政連、約3万5000人)の山野徹委員長の肝いりで初めて企画。少人数制で4月までに7回開いた。20、30代に野村氏を身近に感じてもらう狙いだ。山野氏は「『姿を見るくらい』『名前しか知らない』との声が出ていた」と明かす。 「3期もすれば当初担いでくれた人は次々と引退する。同僚議員は組織から出た人ほど票を減らしがち」と普段から口にする野村氏にとっても渡りに船だった。世代交代とともに陰りかねない支持母体の集票力に危機感がある。陣営は6年前に獲得した43.8万票を目標に据える。 ■□■ 基幹産業が農業の鹿児島選挙区は21年間、自民が議席を独占する。加えて野村氏は農林水産政務官や党農林部会長を務めた「農政のキーパーソン」(茂木敏充自民幹事長)。保守層に支えられるが、昨秋の衆院選で県内の小選挙区が2勝2敗と苦杯を喫した記憶もあり、陣営は楽観ムードを警戒する。
自民ベテラン県議は新人2人を念頭に「女性と若さは脅威になる」と危惧し、人口が多い鹿児島市でさらに支持を集める必要性を訴える。後援会幹部は「高齢への批判が懸念材料だ」と気をもむ。 今回を「総仕上げ」と位置付ける野村氏は「引退も考えたが、周囲の説得もあって立候補を決めた。相手は意識しない」と平静の構え。自民県連の森山裕会長は野村氏の集会に出席するたび「人生100年時代。見る人によっては、野村氏は若手だ」と援護する。 ■□■ 県連は友好団体の支援をもらい、来春に改選を控える県議も一緒になって活動する戦略を描く。後援会は今月から県内一円で集会を計画し、本格的な支持固めに乗り出した。 1日、奄美市名瀬であった国政報告会。野村氏は不穏な国際情勢が食料争奪戦や肥料などの資材価格高騰を招くとし、「食の安全保障に取り組む宿命を鹿児島の議員は背負っている」と存在感のアピールに余念がなかった。 ただ、足元では農業以外の分野での実績が見えづらいと不満もくすぶる。出席した同市の70代農業男性は「農業以外の話も聞きたかった。奄美の世界自然遺産登録を踏まえた経済活性化策などにも力を入れてほしい」と漏らした。