「就活」と検索しようとすると「死にたい」が表示される理由 企業の「常識」に違和感を覚える学生、不採用理由が分からず心病む
ツイッターやTikTok(ティックトック)の検索欄に「就活」と入力すると、「鬱(うつ)」や「死にたい」という検索候補が上位に出てくる。不採用の 理由が分からない、いつ終わるのか先が見えない―。多くの大学生が就職活動の「常識」にストレスを感じ、インターネット上で悩みを打ち明けている。昨年、就活を経験した記者(23)が背景を取材した。(共同通信=丹伊田杏花) 【図】SNS投稿調査のイメージ 企業が就活生の「裏アカ」調査、たった数十分で特定も
▽守られない採用活動ルール 日本の企業は大学卒業と同時に入社を求める新卒一括採用が主流だ。政府は採用活動の日程にルールを定め、経済団体などに順守を求めている。現行のルールでは、会社説明会は大学3年生の3月1日以降、面接などの採用選考活動は4年生の6月1日以降、内定は10月1日以降とされている。かつては日本経済団体連合会(経団連)がルールを示し、加盟する約1400の企業に順守を求めてきた。ただ破っても罰則はなく、形骸化が指摘されていた。経団連が廃止を決め、今は政府がルール作りを担う。 ルールを定めるのは企業の足並みをそろえ、学業への影響を避けるためだとされている。だが実際はルールの日程より前に学生にアプローチしたり、事実上の内定を出したりする「解禁破り」が当たり前になっている。記者は大学3年の9月、ある業種の会社の採用ページにメーなどを入力すると採用開始の案内が届き、その流れでエントリーシートを提出した。政府が定める就活ルールよりもかなり早い日程だ。
リクルート(東京)の「就職みらい研究所」の調査では、23年卒業予定の大学生の7月1日時点の就職内定率(内々定を含む)は前年同時点比2・8ポイント増の83・3%だった。企業の採用活動の早期化は顕著で、それに伴い、なかなか内定が得られない場合は就活期間が長期化する恐れがある。 政府のルールに強制力がないため、企業の採用活動にはさまざまな臆測が飛び交う。昨年、就活をした東京都の男性(23)は少しでも多くの情報を得ようと、数千人が参加する就活に関するLINEのオープンチャットに参加した。だが自分が知らない選考日程などの情報を目にする度に、気持ちが不安定になり何時間もインターネットで情報の信ぴょう性を調べることがあった。「何が正しいのか、精査するのに苦心した」と振り返る。 そもそも、こうした事態を招くルールに意味はあるのか。担当する内閣府の爲藤里英子さんは狙いをこう説明する。「ルールがなかった場合に起こる、より一層の企業の採用活動の早期化や、学生の就活期間の長期化を避けるため」。つまり、企業の採用活動は自由であることが前提であり、ただそれだと極端な「青田買い」が進んでしまうため「一定のルールを示すことが必要」という考え方だ。