日系、中国事業「拡大する」最低21%…内需不振・米制裁も影落とす
中国経済の先行きへの懸念が一段と高まっている。日本貿易振興機構(ジェトロ)による日本企業への調査によると、今後1―2年で中国事業を「拡大する」と回答した割合は比較可能な2007年以来、最低の21・7%となった。不動産不況に伴う中国内需の不振に加え、米国の対中制裁の影響が影を落とす。トランプ米次期政権では中国以外の国への追加関税の発動も想定され、サプライチェーン(供給網)の混乱への警戒感が高まりそうだ。(編集委員・田中明夫) ジェトロがまとめた24年度の「海外進出日系企業実態調査」において有効回答7410社のうち、中国事業について762社の回答で慎重姿勢が顕著となった。調査は8月後半―9月に実施した。 ジェトロの石黒憲彦理事長は「中国現地の需要や受注減少を理由に事業を縮小する動きが目立つほか、地政学リスクを縮小の理由に挙げる企業も一定数存在した」と説明する。中国で急速に電気自動車(EV)も普及し、「日系企業が厳しい競争に置かれている実態が浮かぶ」とした。 一方、インド事業については、今後1―2年で「拡大」すると回答した割合は80・3%に上り、ブラジルやアラブ首長国連邦(UAE)の事業も「拡大」の割合が60%を超えた。グローバルサウス(南半球を中心とした新興・途上国)の旺盛な需要を取り込もうとする姿勢が鮮明だ。 ただ11月の米国大統領選挙で自国産業の保護など「米国第一主義」を掲げるトランプ前大統領が当選したことで世界経済の不確実性は高まっている。トランプ氏は早速、中国製品への10%の追加関税と、メキシコやカナダからの輸入品に25%の関税を課す方針を示しており、供給網への影響が懸念されている。 石黒理事長は「(追加関税が実行されれば)自動車関連を中心にメキシコで生産して米国に提供する供給網が見直される可能性がある」とみる。ただ「どの品目に追加関税を課すのかなど情報をしっかり追うことが大事であり、具体的な措置の中身を注視して適切に企業に情報を提供していきたい」とした。