『学マス』、十王星南「小さな野望」は伝統と革新の1曲 「蒼い鳥」「こいかぜ」…椎名豪ワークスを辿る
椎名豪、歴代『アイマス』シリーズでも数多くの名曲を制作
さらに歴代の『アイドルマスター』シリーズにおいても数多くの印象深い楽曲を制作。シリーズ最初期のナンバーである如月千早(CV:今井麻美)「蒼い鳥」(2005年)は、歌にすべてを捧げる彼女のキャラクター性ともリンクする強い決意が込められたバラードで、生オーケストラを導入した切なくも壮大なサウンド、今井の歌唱力の高さも相まって、現在も愛され続ける人気曲となっている。 その後も、より本格的なオーケストラサウンドが全編に敷かれた三浦あずさ(CV:たかはし智秋)歌唱の感動的なバラード「隣に…」(2007年)、後に3部構成の組曲形式という荘厳極まりない新アレンジバージョンも制作された高垣楓(CV:早見沙織)「こいかぜ」(2012年)、管弦楽とクワイアによるゴージャスなサウンドが星の煌めく夜空の如き景色を描き出す詩花(CV:高橋李依)「Blooming Star」(2017年)などを提供。椎名豪×『アイドルマスター』といえば壮大なオーケストラ楽曲というイメージが定着するほどに、インパクトの強い名曲を生み出し続けてきた。 今回の星南のソロ曲「小さな野望」も、まさにその系譜に連なる豪華絢爛な楽曲に仕上がっている。真部裕ストリングスとブラスセクションに木管楽器を交えた重厚なアンサンブル、力強く鼓動する4つ打ちのビート、ワブルベースやエスニックなコーラスなどを盛り込みながら様々に展開していくサウンドは圧巻で、それらに後押しされながら力強く気品に満ちた歌声を届ける星南もまた、“学園一のアイドル”としての威厳と風格を発揮。孤独や寂しさを抱えながらも、自らの“小さな野望”を叶えるために前を向く歌詞のストーリーと、終盤でテンポを落として勇壮に歌い上げるミュージカルのような構成を含め、十王星南というアイドルの魅力と本質を伝えるナンバーと言えるだろう。 『アイドルマスター』シリーズの文脈や伝統を踏まえつつ、各アイドルのキャラクター性と楽曲提供クリエイターとの相性を加味した新鮮な楽曲を次々と届けている『学マス』。キャラクターソングというアニメ/ゲーム音楽ならではの文化における意欲的な挑戦として、今後も引き続き注目していきたい。 ※1:https://www.famitsu.com/article/202411/24255
北野創