航空史上最悪の事故から39年、人生を変えられた遺族の思いを聞いた 520人犠牲の日航機墜落、御巣鷹「慰霊登山」に同行して
▽「安全に妥協許されない」 今年1月に羽田空港で日航機と海上保安庁の航空機が衝突し、海保機の5人が犠牲となった事故に心を痛める声も聞かれた。1985年の墜落事故で当時32歳の山口静子さんら姉一家4人を亡くした、横浜市の宮坂幸子さん(67)は、厳しい言葉を投げかける。「我がことのように胸に来る。安全を忘れているのではないか」 日航の鳥取三津子社長にとって、社長就任後初めての8月12日当日の慰霊登山となった。追悼慰霊式に出席した後、記者団の取材にこう決意を述べた。 「安全には少しの妥協も許されないと改めて感じ、社長としての原点が8月12日だと自分に言い聞かせた。異変に気付ける感度を持って臨みたい」 ▽繰り返すトラブル 日航では昨秋以降、アメリカで滑走路誤進入や機長の飲酒トラブルがあったほか、福岡空港で許可なく滑走路手前の停止線を越えたり、羽田空港で日航機同士が接触したりと、国内でも安全運航に関わる事案が相次いでいる。
これらの再発防止に向けた取り組みをまとめ、6月、国土交通省に提出した。 社員らは39年前の事故をどう引き継ごうとしているのか。若手社員は今年6月、安全への意識を見つめ直そうと、「8・12連絡会」の事務局長・美谷島邦子さんを社内に招き、講演会を開いた。 約100人が参加し、遺族の悲しみや安全への思いを改めて実感した。企画者の一人、谷内友理香さん(29)は「一便一便、お客さまの命と人生を預かっていると一層肝に銘じた」と語る。 運航を管理するオペレーション本部の谷内さんと関根美賀子さん(30)、安立里菜さん(29)が、安全の観点から業務について話し合う場で発案した。6月13日、運航だけでなく、マイレージサービスなどさまざまな部署からオンラインも含め参加があった。 ▽加害者の私たちに 関根さんは、1月に羽田空港で起きた海上保安庁機との衝突事故の対応を経験した。事故やトラブルの兆候に関し「安全でないものは目に見える」と戒める美谷島さんの言葉が印象に残ったという。