NHKの新視聴者開拓と NHKプラスという武器
課題は若い視聴者をどうやって増やしていくか
〈はじめに〉以下に掲載するのは月刊『創』(つくる)2021年1月号の総特集「テレビ局の徹底研究」からNHKについてのレポートを転載したものだ。新たな若い視聴者をどう開拓するか。編成センター長の話は興味深い。(編集部) NHKにとってここ何年かの大きな課題は「若い人に見てもらうテレビ局にするにはどうしたらよいか」ということだ。NHKをよく見ている視聴者層を同局はロイヤルカスタマーと呼んでいるが、年齢で言うと60~70代が中心だ。いまだに災害報道や選挙報道では高い視聴率を確保し、信頼性を保っているNHKだが、若い視聴者をどうやって増やしていくかというのは、大きな課題になりつつある。 例えば昨年のこの特集で詳しく紹介したが、2019年には土曜23時台に「よるドラ」という新しいドラマ枠を新設した。20~30代の若いディレクターに企画を出してもらい、若い人向けの番組を作っていこうという趣旨で、実際、20代から30代によく見られる作品がラインナップされている。この10月から始まったのは、中条あやみさんが「あの世の裁判官」に扮するという『閻魔堂沙羅の推理奇譚』だ。 NHKでは従来から若い視聴者獲得を意識してきた金曜22時台の「ドラマ10」という枠もある。そのほかアニメを積極的に手がけてきたのも若い視聴者を意識しての編成だ。 さてそうした取り組みのうえに、2020年は、春にNHKプラスという新たなデジタルサービスが立ち上がった。見逃し配信なども含めて地上波と配信の連動が放送界全体の大きなテーマになっているだけに、NHKにとっては大きな存在といえる。2020年のコロナ禍の中でNHKはどのようにしていろいろな課題に取り組んでいったのか、NHK編成センター・矢部典男センター長に聞いた。 「新しい視聴者開拓の取り組みというのは、NHKにとって喫緊の課題です。59歳以下の層の方々にいかにご覧頂くかというのは、大きなテーマだと思っています。 そのうえでこの1年間で言うと、新型コロナウィルスの影響という問題があり、多くの番組で一定期間新作が作れなくなりました。定時番組が通常通りに編成できず、BSで放送した番組を地上波でかえすといった編成上の工夫をしたり、あるいは以前のアーカイブス番組でも良質なものを発掘して編成する。さらには、学校が休止の期間があったので、そこにむけて学校教育を支援する番組をサービスを手厚くするといったことをやってきました。その結果、そういったことが新しい視聴者を開拓するというポテンシャルを持っていることもわかってきました。 最も大きかったのが、NHKプラスというデジタルサービスを始めたことです。テレビと同時にネットでも番組をご覧頂けるような環境を3月からスタートさせました。付随して、見逃し配信ということで放送後1週間は番組を視聴頂くことができるようになっています。ネットを介してNHKの番組をご覧頂く伝送路ができたことは非常に大きいと思います。春先からスタートして11月現在、約100万人の方にIDの登録をしていただいています」