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コロナワクチン候補の最終治験を開始、MERSの研究を応用した有望株、英オックスフォード大

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ナショナル ジオグラフィック日本版

ブラジルで第3相試験

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン候補である「ChAdOx1」の臨床試験が、ブラジルで5000人の被験者を対象に始まった。英国のオックスフォード大学が製薬会社アストラゼネカと共同で開発したワクチン候補だ。 ギャラリー:コロナ、ペスト、天然痘、パンデミックと闘い続ける人類  2020年5月、世界保健機関(WHO)の主任科学者ソウミャ・スワミナサン氏は、ChAdOx1について、最も研究が進んでいるコロナワクチン候補であると発言した。  3段階ある臨床試験の第1相と第2相試験は4月にイングランド南部で実施され、健康な18~55歳の1000人以上で安全性と免疫反応が確認された。そして現在、最終段階である第3相試験が、ブラジルのサンパウロ連邦大学と他2カ所で実施されている。  今後は英国、米国、南アフリカでも、最大5万人のボランティアを募って試験される。そして、11月までの結果を全てまとめて、ワクチンの有効性が認められれば、オックスフォード大学は年末までに英国の医薬品・医療製品規制庁に承認を申請する。  一方、米国では、モデルナ社が開発したmRNAワクチンの第3相試験が7月下旬に始まった。全米89カ所で、3万人を対象にワクチンの有効性を確かめる。

MERSの研究を受け継いだワクチン候補

 COVID-19が流行する前から、オックスフォード大学はウイルスベクターと呼ばれる技術を使って、別のタイプのコロナウイルスによるMERS(中東呼吸器症候群)のワクチン開発に取り組んでいた。WHOによれば、2012年9月にサウジアラビアで発生したMERSは27カ国で報告され、2019年11月までに2494人が感染、858人が死亡している。  2019年12月に初めてCOVID-19が報告されたとき、MERSワクチンの研究はすでにかなり進んでいた。そこで科学者たちは、この技術と知識を基にCOVID-19のワクチン開発を始めた。  まず、一般的な風邪のウイルスであるアデノウイルスを、人間の細胞で複製できないように遺伝子操作で弱体化させる。これを抗原の運び手(ベクター)とすべく、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の一部であるスパイククタンパク質の遺伝子を組み込む。スパイクタンパク質とは、SARS-CoV-2の表面にとげのように突き出ている部分で、人間の細胞への侵入を助ける。  ブラジルの治験コーディネーターを務める医師のスー・アン・コスタ・クレメンス氏によると、ウイルスベクターワクチンは「トロイの木馬」のように機能するという。「アデノウイルスの中に、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質を隠して運びます。それが人間の体内に注射されると、このとげが免疫反応を起こさせます」  第1、第2相試験の結果は、7月20日付けで医学誌「The Lancet」に発表された。倦怠感や頭痛など、軽い副作用を訴える被験者がいたが、重篤な副作用は報告されなかった。そして、病原体を見つけて攻撃する役割を担う、抗体とT細胞の強い免疫反応が見られた。

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