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こんなときだから生まれた、完全リモート映画。行定勲監督インタビュー

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ぴあ

「いま、やれることをやろうと思います」。『世界の中心で、愛をさけぶ』(04)、『ナラタージュ』(17)などで知られる行定勲監督と監督のそんな想いに賛同して集まった6人の俳優が、感染拡大を阻止するために完全リモートで撮影、制作したショートムービー『きょうのできごと a day in the home』がYou Tubeにて期間限定で公開中!緊急事態宣言下で、行定監督はなぜこのテレワーク映画を作ろうと思ったのか!? その想いと制作の裏側を聞いた。 『きょうのできごと a day in the home』は、“不要不急の外出の自粛が要請されたこんな時でも作り手には何かできることがあるのではないか? こんな困難な状況だからこそエンタテインメント作品を作ることを諦めてはならないのではないか?”と考えた行定勲監督が、感染を拡大させないため、6人の俳優と「お家にいようよ」と呼びかけることをテーマに完全リモートで制作した約45分のショートムービーです。 オンライン同窓会の呼びかけで、それぞれの部屋のPCの前に集まった6人が好きな飲み物を片手に好きな映画のタイトルを挙げたり、昔話に花を咲かせるその内容は、現実のリアルとフィクションが混ざり合った不思議な味わい。 俳優陣の素顔のようにも見える自然な芝居で、ささやかな笑いや毒も込められていて、PCで6人と同じように作品を鑑賞している視聴者も同窓会に参加しているような気分にしてくれる。 もちろん、行定作品ならではの驚きの展開にもなっているし、6人が劇中で挙げる名作映画のタイトルは家に閉じこもっているみなさんの今後の鑑賞の参考に。 作品自体も4月24日(金)20時からの配信開始以来1週間ですでに視聴者10万人超を記録し、行定監督のメッセージが静かに確実に浸透していっているようだ。そこで行定監督を緊急直撃! これを読めば、作品の見え方が変わってくるかもしれない。 ※このインタビューは内容に触れています。作品をまだご覧になってない方は。、鑑賞後にお読みください。 ――本作を作ろうと思った具体的なきっかけを教えてください。 映画『劇場』の公開が延期になり、ディレクターを務めるくまもと復興映画祭も延期が決まってかなり精神的に参っていました。 作り手がこの停滞している時間に何も作らないのは不健全だとも思っていました。 その鬱屈した気持ちを打破したいと思っていたときに、脚本家の伊藤ちひろさんから「オンラインで何かできるんじゃないですか?」という提案があって、この企画が生まれました。 こういう事変のときには音楽が速攻性があると言われていて、映像は後手に回ること多い。 でも、我々映画人にもやれることがあるのではと考えたんです。 ――本作のアイデア(オチ)は、行定監督が思いつかれたのでしょうか? はい、そこはそうです。 TwitterなどでZoomを使ったリモート飲み会をしている写真を目にしていて、コロナ禍の即時的な設定として採用しました。 基本的には大まかな脚本を私が書いて、その構成立てとキャラクターのディテールを脚本家に書いてもらいました。 ――柄本佑さん、高良健吾さん、永山絢斗さん、浅香航大さん、アフロさん(MOROHA)、有村架純さんのキャスティングはどのように決まったのでしょう? 俳優たちも家に閉じこもっているんじゃないかと思って、高良健吾に今の気分を聞いてみたところ、「何か出来ないかと思っていました」という彼の言葉をもらえたんです。 それで、信頼できる俳優たちに声をかけさせてもらいました。 ――出演のオファーをしたときのそれぞれの反応は? みんな二つ返事でした。 MOROHAのアフロ君は役者の仕事をするのは初めてなのでかなりホン(台本)を読み込んで質問してきましたが、他の人たちは全く質問もなかったです。 ある意味、即興性を楽しもうという感じだったのではないかと思いました。 ――ヒロイン役に有村さんを起用された理由は? 魔性性を感じない、純真さを感じさせる人がいいと考えていました。 意外性のある女優がいいのでは? と思って有村さんに声をかけました。 ――それぞれのキャストが持ち込んだもの、アイデアなどがあれば教えてください 好きな映画を語るところはそれぞれのアドリブです。 そこをアドリブにすることで、『ラヴソング』(98年日本公開/監督:ピーター・チャン 出演:レオン・ライ、マギー・チャン 主題歌:テレサ・テン)以降の話の流れにリアリティが持たせられるのではないかと思っていました。 ――実際の撮影はどのように行われたのでしょうか? 全てリモートで、始まったら最後までカットはかけずに通しました。 それを録画して、最後にテロップだけ入れて、そのまま完成品にしました。 ――全員がフレームから出たり、入ったりしますが、そのあたりは俳優に自由にやってもらう形だったのでしょうか? 一度だけリハーサルをしました。そこで思ったことを伝えました。あとは全て俳優の自主性に任せました。 アップにしたければカメラによって、引きたければ下がる。フレームから出たり入ったりするのも自由。「アドリブも自由に入れていい」と伝えました。 ――劇中でみんなが話す好きな映画には行定監督の好みが見え隠れしますが、あれはすべて台本通りですか? それとも、各俳優の実際に好きな映画が反映されているのでしょうか? 脚本にある部分とない部分があります。ホン・サンスや『ラヴソング』、ジム・ジャームッシュなどは僕の好みですが、それぞれの好きな映画はそれぞれが好きなものをこのシナリオとの相互関係を含めて考えてきたものです。 俳優たちは映画をあまり観ていないような役を演じていますが、みんなかなりの映画通なので、絶妙な作品を紹介してくれたし、この映画の内容とも調和がとれていて面白かったです。 ――音声が聞き取り難いところも逆にリアルでしたね。 Zoomの音声をそのまま活かしています。あえて別録りはしませんでした。 聞こえないところで聞き返すのはオンラインのリアリティなので。 聞こえなければ聞こえないと顔を寄せたり、聞き返してくれればいいと思っていました。 ――今回、この新しい試みをやったことで映像表現の新たな可能性を感じたりしましたか? 今しかないツールを使ったのは必然でした。 この頃からこのコミュニケーションが一般化したんだと、数年後に話しているのではないかと思います。新たな可能性なのかは分かりませんが、この状況も含め、この時代の即時的なものに寄り添った表現をしたと思っています。 ――『きょうのできごと』というタイトルにはどんな想いが込められているのでしょう? 2005年に公開された拙作のタイトルからの引用です。 あの作品は9・11が起きたときに企画していて、今回は新型コロナ禍。 テロやウィルスで世界が揺らいだときに自分たちは何をやっていたのかを映画にするところが同じだったのと一晩の飲み会が一緒だったので、『きょうのできごと』の原作者、柴崎友香さんに許しをもらって同じタイトルにしました。 ――すでに多くの人が鑑賞されているようですが、その反応をどう受け止められていますか? とにかく未曾有の出来事で世の中が大変なことになり、家に閉じこもって外出自粛を余儀なくされている人たちが楽しかったと喜んでくださっているメッセージをもらって嬉しいです。 とにかく、この状況をみんなで乗り越えて、また映画を観にきて欲しいと思っています。 ――行定監督自身は、いまはどんな日々を送られているのでしょう? ずっと外出せずに次回作を構想しています。 ――最後に。コロナの1日も早い終息を願っている人、行定監督の2本の新作『劇場』『窮鼠はチーズの夢を見る』の公開を心待ちにしている映画ファンの人たちにメッセージをお願いします。 正直、どんな形で観客の皆様に映画が届くのか不安な部分もありますが、とにかく楽しみにお待ちください。なるべく早い形で皆様に観ていただけるよう頑張ります! 『きょうのできごと a day in the home』は衝撃の事態を記録した、この状況だから産み落とされた作品ですが、行定監督の力強い言葉、こんなときでも諦めずに何ができるのか? を考える前向きな姿勢、6人の俳優陣たちの自然な会話に元気をもらえた人も多いのではないでしょうか? でも、映画はやっぱり映画館で観たいもの。友人や仕事仲間とお互いの顔を見ながら「完全リモートで作られたショートムービーがあったよね」という話ができる日が、行定監督の2本の新作を映画館で観られる日が、1日も早く訪れる日を楽しみにこの苦境を乗り越えましょう。 取材・文:イソガイマサト

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