レースキャリアの岐路をJLOC則竹代表に救われた小暮卓史&元嶋佑弥。初優勝皮切りに勝ちまくり大逆転でGT300王座「少しは恩返しできたかな」
2024年のスーパーGT・GT300クラスのタイトル争いは、最終戦鈴鹿で劇的な結末を見た。ポールポジションからスタートし、一時はポジションを落としながらも見事な追い上げで勝利を手にした88号車VENTENY Lamborghini GT3の小暮卓史、元嶋佑弥組が、逆転タイトルを手にしたのだ。 【ギャラリー】“カルソニックブルー”は永久に不滅……スーパーGTを彩った『カルソニック IMPUL』のマシンたち JLOCの小暮&元嶋×ウラカンGT3×ヨコハマタイヤのパッケージは今年で6年目。これまではなかなか勝てないレースが続いていたが、昨年途中からのEvo2パッケージへのアップグレードを機に戦闘力を増していき、昨年の最終戦で小暮、元嶋組としての初優勝を記録。そして今季は第2戦で優勝すると、終盤3レースで3連勝し、65号車LEON PYRAMID AMG、2号車muta Racing GR86 GTといった手強いライバルたちを抜き去ってタイトルを獲得した。 シリーズの前身である全日本GT選手権が発足した1994年から手製のカウンタックで参戦していた則竹功雄代表にとっても、30年越しの初王座獲得は万感の思いだという。彼は「ランボのワークスと比べても遜色ない」という優秀なドライバー、ウラカンGT3の“最終形態”とも言えるEvo2マシン、そしてチーム力やヨコハマタイヤの進化といったあらゆるピースが揃ったことでの王座獲得だと語った。 そんな則竹代表に対して、ドライバーのふたりは強い恩義を感じている。元嶋は若手時代にSRS-F(現HRS-F)のスカラシップを獲得するも、そこからはなかなかトップカテゴリーまでステップアップできずにいたが、2017年にJLOCに加入。そこからスーパーGTでの長期的なキャリアが本格的に始まっていった。そしてかつてはGT500のトップドライバーとしてチャンピオンも経験した小暮も、2018年を最後にGT500のシートを喪失した後にチャンスをもらったのがJLOCだった。 元嶋は、実績あるスター選手の小暮と組むことになったシーズンの後、JLOCと「心中する」覚悟を決めたという。 「僕はスーパーGTにフル参戦できるかどうか、厳しいかもしれないという中で則竹代表に拾ってもらう形で、スーパーGTのキャリアが本格的に始まりました」 「87号車としての1年目が終わった後、『お前、来年最高のパートナー用意したから楽しみにしとけ』と言われて。それがまさか小暮選手とは思っていませんでした。幼い頃、テレビの向こう側でめちゃくちゃ活躍して暴れまくっていた選手がチームメイトになるなんて、と思いました」 「JLOCに入った当初は、もっと強いチームで走ってチャンピオンを獲りたいという気持ちもすごくありましたし、そういった動きもしましたけど、小暮選手と組ませてもらったシーズンを過ごした後に、則竹代表に『僕、このチームの心中します』と言いました。その辺りからこのチームでチャンピオンが獲りたいという気持ちに変わっていきました」 「昨年最終戦でようやく勝てて、小暮選手と『ホッとしたね』と話したところから、チャンピオンまでここまで早く来るとは思いませんでしたが、則竹代表には少しだけ恩返しできたのかなと思います。まだまだ目標もありますので、これからも頑張れたらなと思います」 GT300で勝つことはGT500とは違った難しさがあると語る小暮は、則竹代表からの言葉に鼓舞される一方で、ベテランとしてチームを引っ張っていく責任やプレッシャーも感じていたと語った。 「僕は長年GT500に乗ってきた中で、GT500卒業というような形になった時、レーサー人生がその時点で終わりかなと思っていたところも正直ありましたが、そういう中で則竹代表かチャンスを与えていただきました」 「GT3は一見簡単に乗れそうですが、GT500とはまた違ってすごく奥が深いというか、難しさがあります。元嶋選手の走りに圧倒されてタイムも敵わず、どうなっちゃうんだろうと思っていた時、則竹代表から『大丈夫、お前のこと信じてるから』と言っていただけたのは、嬉しくもあり、なんとかしないといけないというプレッシャーにも感じました」 「チャンスを与えてくれたチーム、則竹代表に恩返ししたいという思いがありましたが、優勝がなかなかできず、ものすごくハードルが高かったです。ただ昨年度の最終戦で勝ってから流れが良くなって、チームもレベルアップしました。今回のチャンピオンも、それまで培ってきたものが爆発したのかなと思います」
戎井健一郎
【関連記事】
- ■マレリとのラストレースで見せた“インパルらしさ”。12号車MARELLI Zが最後尾スタートから3位表彰台……決勝での強さを遺憾なく発揮
- ■24号車リアライズZ名取鉄平、予選で速さ見せるも決勝は1周で最後尾に転落。ウォームアップに苦しみ「1コーナーまでずっとホイールスピン」
- ■スーパーGT最終戦予選のGT300順位認定で混乱。タイム合算方式の規則解釈で審査委員と運営に相違
- ■“ラストダンス”で眩く輝く。スーパーGT引退のクインタレッリ、ニスモフェスで力もらいラストレースで今季最高の走り「後悔はない」
- ■JLOC則竹代表が語る、ル・マン24時間への思い。2024年にウラカンGT3 “Evo2”でカムバックの可能性も