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《失敗の本質》専門家にとって大事なのは結果、すなわち勝てていること【岩田健太郎教授・感染症から命を守る講義⑲】

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  第二波が来ようと、感染症から命を守るための原理原則は、変わらない。  しかし、感染症対策で「正しい判断」がなされているかは、医療現場から離れるほど混迷を極めている様相だ。専門家の分析・提案と政府の判断の間にある「溝」は科学的事実より現実的事情に左右され、いまや組織的に誰が責任ある判断を担っているのかわからなくなっている。  なぜ、日本の組織では、正しい判断は難しいのか。  なぜ、専門家にとって課題との戦いに勝たねばならないのか。  この問いを身をもって示してくれたのが、本年2月、ダイヤモンド・プリンセスに乗船し、現場の組織的問題を感染症専門医の立場から分析した岩田健太郎神戸大学教授である。氏の著作『新型コロナウイルスの真実』から、命を守るための成果を出すために組織は何をやるべきかについて批判的に議論していただくこととなった。リアルタイムで繰り広げられた日本の組織論的《失敗の本質》はどこに散見されたのか。敗戦から75年経った現在まで連なる問題として私たちの「決断」の教訓となるべきお話しである。 この記事の写真はこちら ■甘かった見込み  2020年1月25日に香港でダイヤモンド・プリンセスを下船した乗客の中から、1人の新型コロナウイルスの感染者が見つかりました。そのクルーズ船が3000人以上を乗せて横浜に帰ってくるという話になったときに、NHKの特集などによると国は結構甘く見ていたようです。その対応も、「大した問題じゃないだろうから、とりあえず横浜港に停泊させて調べましょう」みたいな感じだったとのことです。  ところが、船が横浜に寄港してから何十人かをPCRで検査したところ、そのうち10人が陽性だった。「えー、こんなにたくさんいたのか」と、政府はそこでびっくりしたと思います。  サンフランシスコ州のオークランドに、ロイヤル・プリンセスというもう一つのクルーズ船が停泊しています。あれは、先に日本での悲喜劇を見ていますから、最初から全力投球で対応しています。最初からCDC(Centers for Disease Control and Prevention=疾病予防管理センター)がヘリで入って、検査して、乗員・乗客をいきなり下船させました。  クルーズ船が感染症に弱いというのは、感染症の専門家の間では昔から常識でした。肺炎とか、インフルエンザとか、ノロウイルスなんかがクルーズ船で流行りやすいことは以前から分かっていたんです。アメリカのCDCもガイドラインを作っていますし、事例もたくさん報告されています。もちろん論文も出ています。  しかし、おそらく日本の官僚たちはそのことを理解していなかった。  官僚というのは、要するに出てきたデータしか見ません。だから多分、香港で感染者が出た報告にも「なんだ、1人しか出てないじゃないか」という話になって、甘く見たんだと思います。  感染症への経験や、専門知識のバックグラウンドがある人とない人、つまり玄人と素人の違いが出てしまったことが背景にあって、初動が遅れたわけです。

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