「国立大は今後も値上げが続出する」 私立文系でも学部で20万円以上の差、各大学の授業料を比較すると…
なかでも国際系学部の授業料の高さは、多くの大学で際立っています。ほかの文系学部に比べて国際系学部の授業料が高い大学は、写真のような例があります。 国際系学部は定員が比較的少ないことや、外国人教員を含めて教員を集めるためにお金がかかることなどから、授業料が高くなっているようです。また、在学中の海外留学が必須となっていることが多く、その場合はさらに費用がかかります。 「国公立大学でも、千葉大学国際教養学部や秋田の国際教養大学など、留学が必須の場合は要注意です。留学中の授業料は免除されるケースもありますが、自宅外生の場合は住居費が日本と海外で二重にかかるなど、国公立大学とはいえ実際にかかる費用は高額になることがあります」
新設の学部は、学費が高い
心理学部は文学部などと変わらない大学も多いです。例えば上智大学は文学部(新聞学科除く)や法学部、経済学部の授業料は88万8000円ですが、総合人間科学部の心理学科は96万7000円です。同志社大学は、文学部の授業料は76万3000円ですが、心理学部は92万3000円と、大学によっては大きな差があります。 「新しい学部は、新校舎を建てたり設備を導入したりと初期費用がかかるため、全体的に授業料が高くなる傾向があります」と石原さんは話します。次の表は、新設する大学が増えている情報系学部の授業料の例です。 理工系の情報系学部では、例えば東京都市大学情報工学部は151万2000円、立命館大学情報理工学部は167万2600円など、さらに授業料が高くなる傾向があります。
学費が変動する「スライド制」も
各大学の学費は入試要項などで調べることができますが、記載されているのは主に入学金、授業料、施設設備費、実験実習費です。このほかに留学費用や教材費、機材費(パソコンなど)がかかってくることもあります。 特に教科書は高校に比べて専門的なものを使用するので、1冊の金額が高くなる傾向があります。また、留学する場合はそれまでにTOEFL iBT®などの英語テストのスコアが必要になるため、繰り返し受験する場合も少なくありません。TOEFL iBT®の受験料は、1回245USドル(5月9日現在で約3万8140円)です。 「入試要項やホームページなどで公表されている以外に、どれくらいの費用がかかるのかは大学や学部によるので、オープンキャンパスに参加する際などに、保護者が積極的に質問するといいと思います」 また、物価や経済状況の変化に応じて、学費を変動する「スライド制」を導入している大学があります。この場合、学年が上がるごとに年間授業料が上がっていくことがあるので、注意が必要です。例えば慶應義塾大学はスライド制を導入していて、大学のウェブサイトには「適用するアップ率は前年度人事院勧告による国家公務員給与のアップ率等を基準とします」と書かれています。 大学入学後の学費のことを考えると頭を抱えたくなりますが、費用を抑える方法も増えています。 「大学進学や留学に関して、返済不要の奨学金の種類が増えていることが大きな変化です。また、デジタル化が進み、紙の教材ではなくデジタル書籍を利用できることも多くなりました。さらに最近は、現地に行かなくても海外の大学の授業をオンラインで聴講することも可能になっています」 費用を抑えようと思えば、さまざまな工夫ができるのも今の時代の特徴といえるでしょう。物価高のなかで、学費を抑えるためには、さまざまな情報を集める必要があります。
石原賢一
教育ジャーナリスト、大学入試アナリスト 京都大学工学部卒。1981年学校法人駿河台学園駿台予備学校に入職。高卒クラス担任、高校営業、講師管理・カリキュラム編成、神戸校校舎長などを歴任したのち、2006年から18年間、入試情報部門の責任者として各種マスコミへの情報発信、大学、高校での講演などを数多く担当。24年3月に退職し、現在は43年間にわたる予備校での経験を生かし、少子化が進むなかで大きな岐路に立っている高大接続の現状や今後についての分析、発信を行っている。
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