町職員が”地域商社”で和牛ブランド化実現 「副業」で農家を支援 栃木・茂木町
栃木県茂木町の役場職員が、町の畜産物などの販路開拓を手がける非営利の一般社団法人を設立した。非営利、無報酬なら2人以上で一般社団法人を設立できる。公務員による、副業よりも手続きが簡易で新たな地域農業の活性化に向けた手法となる。行政では難しい、特色ある個人農家の営業活動を後押しする。放牧黒毛和牛のブランド化などで成果を上げている。(小林千哲)
収益は町に寄付
法人の名称は「Social Up Motegi(ソーシャルアップもてぎ)」。町職員の東海林帆さん(39)ら3人が2020年、地域の知名度アップや産業活性化を目的に設立した。働く全員が、無報酬の理事になった。 公務員は、非営利の一般社団法人で無報酬の理事になっても、地方公務員法上は副業には当たらない。活動は勤務時間外の夜や土、日曜日が中心。職場の許可も不要だが、東海林さんらは「応援される活動にしたい」と上司らを説得して理解を得た。 法人は、町産の畜産物や木材の販路開拓、商品開発といった、地域密着型の商社のような事業を行う。昨年度は販売促進活動の受託や商品の販売で165万円の売り上げがあった。収益の半分を町に寄付し、町は一般財源に充てた。
放牧牛を販拡
これまで瀬尾亮さん(67)が、放牧して育てた黒毛和牛肉を「もてぎ放牧黒毛和牛」としてブランド化した。瀬尾さんは、町内の中山間地にある耕作放棄地を借り受け、約8ヘクタールを放牧地として活用。環境保全型の畜産を営むが、地元でも知名度は低かった。 そこで同法人は、ブランド化に向けて「もてぎ放牧黒毛和牛」が返礼品のクラウドファンディングを実施。反響は大きく314万円を獲得した。県内の高級ホテルやレストランを招いて試食会を開いたところシェフらから高い評価を受け、販路開拓につながった。 既に4頭分の牛肉を県内のホテルや町内のレストランに販売。瀬尾さんは「こだわった牛が評価された。料理人や消費者が求めるおいしさを追求できる」と話す。 法人の理事は現在10人で、うち8人が町職員だ。取り組みは、地方自治体の優れた取り組みを表彰する第16回マニフェスト大賞で優秀賞も得た。東海林さんは「特色ある生産者を支援して、町に活気をもたらす仕組みになっていった」と胸を張る。
日本農業新聞