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「問題作連発」の映画会社に長澤、綾野大物が続々出演するワケ

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安藤サクラ、満島ひかり、門脇麦、長谷川博己、菅田将暉、松坂桃李、蒼井優、池松壮亮、長澤まさみ、綾野剛… 実力俳優が次々出演する新興映画会社「スターサンズ」

新型コロナウイルスに翻弄され続けている2020年。緊急事態宣言が解除され、6月1日からは東京都内の映画館も再オープンした。 【写真8枚】続々と出演する大物俳優のプライベートショットはこちら 公開を見合わせていた作品も順次上映される見込みで、約2ヵ月間止まっていた時計の針がようやく動き出した印象だ。まだまだ日常の回帰には時間がかかりそうだが、「劇場で映画を観られる」喜びは、映画ファンにとってひとしおだろう。 緊急事態宣言の発令前、日本映画界にある「新潮流」が生まれたことを覚えているだろうか。藤井道人監督による『新聞記者』が、日本アカデミー賞で最優秀作品賞・最優秀主演男優賞(松坂桃李)・最優秀主演女優賞(シム・ウンギョン)の3冠に輝いた“事件”だ。 『新聞記者』は政府の“闇”に迫る社会派エンターテインメントで、劇中に登場する「レイプ事件」「公務員の自殺」「大学新設計画の裏事情」などといった題材は、日本を騒がせた実在の事件と密接にリンク。この攻めまくった作品の制作・配給(イオンエンターテイメントと共同)を手掛けたのが、いま映画界で“台風の目”になっている制作・配給会社「スターサンズ」だ。 今回は、同社が手掛けた強烈な作品群をご紹介。今後控えている新作も取り上げていく。権力にもタブーにも屈しないスターサンズのラインナップを見て、コロナに立ち向かう「活力」を得ていただきたい。 ◆12年からの本格的な企画・制作で「特異性」を発揮 2008年、映画プロデューサーの河村光庸氏によって設立されたスターサンズ。当初は『息もできない』(ビターズ・エンドと共同配給)などの外国映画を配給していた。そして8年前、2012年の『かぞくのくに』のころから企画・制作・配給と多岐にわたる活動を展開し始める。 安藤サクラと井浦新が共演した『かぞくのくに』は、在日コリアンの家族が、運命に引き裂かれていく姿を描いた社会派ドラマ。北朝鮮から25年ぶりに帰国した兄と、家族の悲しみを静謐に描き、数々の映画賞に輝いたほか、米アカデミー賞・外国語映画賞の日本代表に選出された。センシティブなテーマにいきなり挑むあたり、スターサンズの特異性が感じられる。 その後、2016年に制作された『二重生活』も、強烈な映画だ。哲学を専攻する女子大生が、卒論の題材で隣人の「尾行」を始める――という奇抜な物語で、激しいラブシーンなど、どんどんインモラルな世界になだれ込んでいく。「普通の人」が持つ闇や衝動を描き切った本作には、門脇麦、長谷川博己、菅田将暉、リリー・フランキーといった演技派が集結した。 2017年には、におい立つような戦争映画『海辺の生と死』(フルモテルモと共同配給 主演・満島ひかり)と、菅田将暉とヤン・イクチュンがボクサーを熱演した制作・配給作品『あゝ、荒野』を発表。役者陣に半年間トレーニングを積ませたリアルなボクシングのシーンや、過激な濡れ場、生々しい流血シーンが畳みかける骨太な作品だ。奨学金減額を条件に、若者の徴兵制度が敷かれた2021年の日本という舞台設定やテロリズムなどの描写も、スターサンズらしい攻め具合といえよう。 ◆19年は『新聞記者』松坂桃李、『宮本から君へ』蒼井優、池松壮亮が高評価 2018年に放たれた企画・制作・配給作品『愛しのアイリーン』は、これまでの配給作品に共通する「性」「暴力」「過激性」「社会問題」といったテーマがほとばしった映画で、安田顕の強烈な演技にノックアウトされる。フィリピンで女性を「買い」、妻として日本に連れ帰った男の物語だが、性行為の最中に吐き、路上で自慰行為を始めるなど、行き過ぎた描写のオンパレード。コンプライアンスが叫ばれる現代、こんな映画を世に送り出せるのはスターサンズくらいではないだろうか。 2019年には、『新聞記者』と『i-新聞記者ドキュメント-』を連続して発表。原案、企画、製作、エグゼクティブプロデューサーを務めた河村は、『新聞記者』の制作において「『これ、ヤバいですよ。』『作ってはいけないんじゃないか』という同調圧力を感じつつの製作過程だった」とマスコミ用の資料内で振り返っており、スターサンズとしてもかなりの挑戦作だったことがうかがえる。 同年の『宮本から君へ』(KADOKAWAと共同配給)も、スターサンズ汁が満ちたセンセーショナルな映画だ。蒼井優扮するヒロインのレイプシーンは目をそむけたくなるほどむごく、高所の非常階段で実際に行われた決闘シーンは、身をすくませるような生の迫力が充満している。池松壮亮が血まみれでもがくシーンは、夢に出てくるのではないかと思うくらいの熱量だ(池松は、前歯を折られたシーンを演じるため、自らの歯を抜こうとして原作者に止められたそう)。 ◆役者魂に火をつけて 20年は長澤まさみ、21年は綾野剛・舘ひろし そして今年、実際に起きた「少年による祖父母殺害事件」に着想を得た『MOTHERマザー』が公開予定。男たちにすがって生きる自堕落な母親と、そんな母親から離れられない息子の関係性をえぐるように強い筆致で描いた、かなりの問題作だ。長澤まさみが、これまでのイメージをかなぐり捨てる狂気の母親を怪演。一切容赦のない描写の数々、鋭い問題提起を投げかけるストーリーは、必ずや観客の間で波紋を広げるはずだ。 ーー08年の設立、12年以降に配給に加え企画・制作などにも活動を拡げた同社の作品群をざっと紹介してきたが、この約8年間でよくもここまで濃い力作を制作・配給し続けられたものだと感服させられる。 そしていまや、異端、あるいは孤高だった存在が、日本映画界の“顔”にまで成長した。藤井道人や真利子哲也といった俊英監督の抜擢も、同社の勢いを支えてきたといえよう。 役者陣の限界突破した体当たりの演技も観られるのも、スターサンズ作品の面白さだ。 松坂桃李は「最初に(『新聞記者』の)脚本を読ませていただいたときの衝撃は、今も忘れられません。物語自体はフィクションですが、それが現実の社会とも密接にリンクしていて、『こんな攻めた映画を作るのか!』という純粋な驚きがありました」と脚本の面白さに撃ち抜かれたと語っている。 長澤まさみも『MOTHERマザー』の脚本の魅力にひかれたそうで、「どこか他人事じゃないと思わせられるリアルさがあって、母親の存在の大きさについて、親が子を育てる責任について考えさせられ、この役を演じてみたいと思いました」とコメントを寄せている。 安田顕は「(『愛しのアイリーン』の)試写を観た後、立ち上がれなくなりました。マイク・タイソンに思いっきり殴られた感じで、何なんだこの衝撃は、って」と振り返っており、「観たこともない映画、やったことのない役」を演じられる喜びもあろう。『MOTHERマザー』の阿部サダヲも、「なかなかこのような役(全く思い入れることが出来ないダメな男)を頂く機会がない」とコメントしている。 また池松壮亮は「『宮本から君へ』という題材を借りて、今の時代に対して今やるべき“反撃”をしなければならないと思いました」と使命感に燃えていたといい、スターサンズの手掛ける作品は、総じて「役者魂に火をつける」ものだということが伝わってくる。 2021年には、綾野剛、舘ひろしが極道を演じ、“家族”を描く物語だという『ヤクザと家族 The Family』(監督は『新聞記者』の藤井道人)が公開予定。綾野剛は「渾身の作品が生まれました。現場では今までに感じた事の無い鼓動の連続で、毎日が走馬灯のようでした」と手ごたえをにじませる。 古田新太、松坂桃李が出演する新作『空白』も制作進行中(『愛しのアイリーン』を手掛けた吉田恵輔が監督)で、攻めた作品作りは、まだまだ止まりそうにない。 『新聞記者』制作の際に、河村はこうも語っている。「映画こそ自由な表現を」と――。その言葉通り、日本映画の「枠」をぶち壊し続けるスターサンズの躍進に、今後も期待したい。 文:SYO 映画ライター。1987年福井県生。東京学芸大学にて映像・演劇表現について学ぶ。大学卒業後、映画雑誌の編集プロダクション、映画情報サイトでの勤務を経て、映画ライターに。現在まで、インタビュー、レビュー記事、ニュース記事、コラム、イベントレポート、推薦コメント、トークイベント登壇等幅広く手がける。

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