“どちらが譲歩したか”ではない日韓GSOMIA急転維持
●韓国の発表直後に日本側も会見
米国の働きかけとともに、日韓両国自身の努力も見逃せません。韓国政府は国民の半数以上(韓国ギャラップの調査では51%)がGSOMIAの破棄に賛成するという困難な状況の中で、日本との関係を改善したいとの意思を示す行動を取り始めました。 少しさかのぼりますが、日本の植民地支配からの解放を記念する8月15日の「光復節」演説で文在寅(ムン・ジェイン)大統領は日本批判を控えました。天皇陛下の「即位の礼」に参列した李洛淵(イ・ナギョン)首相は10月24日、安倍首相と会談し、文大統領からの親書を手渡しました。11月4日には、タイで行われたASEAN(東南アジア諸国連合)の関連首脳会議で、文大統領は安倍首相に「座って話し合おう」と促し、約11分間だけですが首脳同士の対話が実現しました。 韓国国会議長の文喜相(ムン・ヒサン)氏は来日中の11月5日、早稲田大学での講演で、徴用工問題について日韓両国の企業と国民による寄付と、慰安婦問題をめぐる日韓合意に基づいて日本政府が「和解・癒やし財団」に拠出した10億円のうち使われなかった残金とを財源に基金をつくり、原告に「慰謝料」を払う法案をまとめたと表明しました。これには日韓双方で賛否両論がありましたが、同議長の日韓関係改善を望む気持ちが表れていました。 韓国側の積極姿勢に対し、日本側も前向きに応じました。そして日韓両国は現在の対立状態を打開する道を水面下で探り始めたものと思います。韓国政府がGSOMIA問題と同時に行った、日本の輸出管理強化措置をめぐる世界貿易機関(WTO)への提訴について、日韓の対話が続く間は手続きを中断すると今回表明したことが、それを物語っています。そうした表明は、韓国側の一方的な見解だけですることはできません。日本側との間で何らかの話し合いが行われ、その結果として一定の落とし所への見通しを得たからこそできた表明であったはずです。 また、22日の韓国側の発表直後、輸出管理を担当する日本の経済産業省は会見を開き、韓国との局長級対話を再開すると発表しました。こんなことは急には発表できません。やはり、水面下で話し合いがあったことがうかがえました。