“どちらが譲歩したか”ではない日韓GSOMIA急転維持
23日に失効する見込みだった日韓の「軍事情報包括保護協定」(GSOMIA)は、急転直下で失効を免れることになりました。8月に同協定を延長せず破棄すると発表した韓国側が方針転換に至った背景は何なのか。今後の日韓関係において何が必要なのか。元外交官で平和外交研究所代表の美根慶樹氏に寄稿してもらいました。 【写真】韓国のGSOMIA破棄は「3年前に戻る」だけなのか?
●米国から協定維持へ“大合唱”
韓国政府は11月22日午後、日韓の「軍事情報包括保護協定」(GSOMIA)について、「いつでも失効が可能という前提で終了通告の効力を停止する」と発表しました。GSOMIAを延長することとしたのです。また、日本政府が取った輸出管理強化措置に関する世界貿易機関(WTO)への提訴については、日韓の対話が続く間は手続きを中断すると表明しました。 韓国はそれまで、日本が韓国に対する輸出管理強化について前向きの姿勢を取らなければGSOMIAを破棄する決定は変えないという態度でしたが、協定が失効する数時間前というぎりぎりの時点になって協定を維持する方向に舵を切ったのです。
韓国が方針を転換した最大の理由は、米国からGSOMIAの延長を求める強い要請があったからであることは誰の目にも明らかでした。 ポンペオ米国務長官は、同協定を破棄する韓国の決定には失望していると述べていました。失効の期限が間近に迫った11月21日にも康京和(カン・ギョンファ)外相と電話で会談し、「意見を交わした」と韓国外務省から発表されましたが、GSOMIAの維持を求めたのは明らかでした。 エスパー米国防長官は11月15日に訪韓したほか、17日にはバンコクで河野防衛相とともに韓国の鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)国防相と会談しました。 これら政治レベルの働きかけに先立って、ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障担当)やスティルウェル米国務次官補(東アジア・太平洋担当)ら米国の高官も韓国を訪問し、説得を試みました。米国議会上院は、11月21日、GSOMIAの重要性を訴える決議を全会一致で可決しました。 要するに、米国は韓国に対し、政府と議会が日韓GSOMIAの維持を強く求めたのであり、いわば大合唱ともいえる状況になっていました。