『海に眠るダイヤモンド』端島シーンはどこで撮影? ロケハンチームの“影の努力”に迫る
特に本作では、“緑なき島”を再現できる場所を探すのに膨大な時間を要した。「背景に木が1本あるだけで、まずはどう隠すかを考えなきゃいけない。ロケハン担当として、そうやって撮影に制限を作ってしまうことは一番したくないことなんです。完璧ではないかもしれないけれど最適な場所を探し出すのが僕らの役目ですね」と仕事にかける思いを口にする。 ちなみに、ロケハン担当が場所を選ぶときに考慮するのは映像に映る風景だけではない。「ロケ地のクオリティはもちろん大切ですが、スタッフの皆さんの作業環境を整えることも僕たちの重要な仕事。近くに暑さをしのげる場所や、お手洗いなどがあって過ごしやすい場所がベストですね」と、チーム全体への配慮も忘れない。まさにドラマ制作の陰の立役者ともいえる存在だ。 壮大なスケールで撮影している本作の撮影現場はピリピリしているかと思いきや、実際に足を運ぶとどこかゆったりとして和やかな空気が流れている。「撮影はとても大変なはずなのですが、揉めることもなく穏やかで笑いも絶えない。家族のようにチームがまとまっています。キャスト&スタッフ全員が端島の島民になっているような感覚があるのではないでしょうか。端島に住んでいた島民の皆さんにも懐かしんでもらえる作品になるように、それぞれが愛を持って同じ方向を向いて制作に臨めている気がします」と、撮影現場を後ろから温かく見守る大藏氏が印象を語る。 そんな大藏氏も、ロケハンのため端島を調べるうちにその素晴らしさを知った1人。「現代では珍しくなってしまいましたが、端島では人と人の距離が近かったことが幸せの理由だったのかもしれませんね。当時暮らしていた人たちにとっては、端島が地元であり故郷。そんな島を出ることになるのは故郷がなくなるのと同じような感覚で、寂しいだろうなと想像できます」と、時と場所を超えて存在する端島に思いを馳せる。 大藏氏は最後に「僕たちロケハン担当が用意するのはあくまで最低限の環境。そこに監督、美術スタッフ、そして撮影部の力が合わさって、あの映像ができあがっています。端島がどれほど素晴らしい場所だったかが映像を通して視聴者の皆さんに伝わったらうれしいです」と語ってくれた。 キャスト・スタッフそれぞれの中にある努力や端島への思いは、目には見えないがたしかに積み重なって映像に乗っている。だからこそ、視聴者の心を動かす作品が生まれるのだろう。そんな制作陣の愛のこもった映像を隅々まで堪能したい。