『海に眠るダイヤモンド』端島シーンはどこで撮影? ロケハンチームの“影の努力”に迫る
また、炭鉱でのシーンもリアルを求め実際の鉱山で撮影しているという。「撮影でお借りしているのは山にある炭鉱なので、気温35度・湿度80%の端島の海底炭鉱とは違い、中はかなり寒い。環境は違えどキャストの皆さんも炭鉱員として働く厳しさを実感していたと思います」と、本作ならではの撮影エピソードを明かしてくれた。 コンクリートで造られた端島を舞台にする本作には、現代の風景で再現するのが困難な場所が多く登場する。大藏氏が中でも探すのに苦労したと語るのは、主人公の兄・進平(斎藤工)が波にさらわれた妻・栄子(佐藤めぐみ)を思い佇む「メガネ」(防波堤にある穴で、古い時代の桟橋の出入口)だ。穴越しに隣の島を見ると錯視効果で拡大して見えることからそう呼ばれ、戦後はゴミ捨て場と化していた場所。もちろん現代ではそんな場所は存在しないため、撮影では古い港のようなところを借りて、美術部と協力して再現しているという。 さらにもう1ヶ所大藏氏を悩ませたのは学校。海沿いにあり、塀の向こうにすぐ海が見える学校が必要だったというが、現代の防災面から考えるとなかなか難しい条件である。しかし、「別の場所のロケハンをしていたときに参考になりそうな学校を見つけて、塚原監督に写真を見せたら、『ここしかないでしょう!ここでやろう!』と決断してくれて」と明かし、本編では実際にそのときに見つけた学校とVFXを駆使して端島の学校を再現している。 さらに、「端島銀座」を再現したオープンセット(野外にある装置)は、長期の撮影でも倒れないように躯体を活かして建てられている。こういった壮大なオープンセットを建てる場所を探すのもロケハン担当者の役割で、この場所を見つけるのにも別の苦労があったそうだ。「立地条件としては、長期間セットを建てておくことができ、撮影に適している環境であること。また、大掛かりなセットなので、倒れないようにするための技術的な条件を最低限満たしていることもポイントでした」と、いくつもの条件をクリアした場所であったことを教えてくれた。 とはいえ、リアルな風景だけで端島を再現するのには限界がある。そこで活躍しているのが先ほども登場したVFX技術だ。大藏氏も完成映像を見て驚いたという。「純粋にすごいなと思いましたし、もしかしたら視聴者の皆さんはほぼグリーンバックで撮影したフルCGだと思ってるんじゃないかな。美術部さんや僕らロケハン担当としては少し悲しいですが(笑)」と、笑いを誘った。 本作のロケハンに携わったのは5人ほどで、これまでに視察した場所は100ヶ所以上にも及ぶそう。そして全て足を運んだというから驚きだ。「ある程度ネットのマップで目星をつけて探しにいきますが、実際に見てみると想像と違うことも多い。理想的な場所はそう簡単には見つからないので、車で走って、歩いて探しての繰り返し。撮影での移動も含めると本作だけでも2万5000キロ以上は走ったのではないでしょうか」と、衝撃の移動距離についても触れる。