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新型コロナウイルス感染症を踏まえたM&A実務の留意点(Ⅰ)

配信

幻冬舎ゴールドオンライン

本記事は、 西村あさひ法律事務所 が発行する『M&Aニューズレター(2020/4/8号)』を転載したものです。※本ニューズレターは法的助言を目的とするものではなく、個別の案件については当該案件の個別の状況に応じ、日本法または現地法弁護士の適切な助言を求めて頂く必要があります。また、本稿に記載の見解は執筆担当者の個人的見解であり、西村あさひ法律事務所または当事務所のクライアントの見解ではありません。

※本ニューズレターは2020年4月7日までに入手した情報に基づいて執筆しております。

1. はじめに

新型コロナウイルス感染症(COVID-19/Coronavirus)により、世界的に企業の事業遂行に甚大な影響が出ており、また、その影響がどれだけ拡大し、いつまで続くのかを見通すのは難しい状況です。4月7日に7都道府県を対象に緊急事態宣言が発令され、外出自粛や営業休止の要請等により企業の事業遂行に更なる影響が及ぶことが想定されますが、新型コロナウイルス感染症の影響は、我が国のM&A実務にも随所に及びつつあります。 既に契約を締結済でクロージング実施未了のM&A取引については、契約締結時に想定していなかった事態が発生しており、契約当事者の予想を超えて対象会社の財務状態や業績が悪化している場合も多いため、クロージング実施に向けてどのような対応をすべきか検討が必要です。新型コロナウイルス感染症の影響を理由に、M&A取引を中止したり延期する事例も実際に出始めています。たとえば、海外では、新型コロナウイルス感染症による世界経済および金融市場の混乱や当局の審査の遅延等を理由に、ファイザーが3月26日にマイランとの事業統合の延期を公表し、また、ゼロックスが3月31日にHPに対する買収の撤回を公表しました。国内でも同様に神戸製鋼所が3月31日に子会社株式の譲渡の延期を公表し、古河電気工業も同日に子会社株式の譲渡の延期を公表しました。 これから契約を締結しようとしているM&A取引については、新型コロナウイルス感染症のリスクをどのように配分するかについて売主・買主間で合意ができなければ、そもそも契約締結に至ることは難しいと考えられます。買主としては、通常時であれば、必要なデューディリジェンスを実施しリスクを把握した上で、そのリスクを売主との間で適正に配分するべく交渉することになります。もっとも、リモートワーク等によりデューディリジェンスの実施に制約が生じていることや、新型コロナウイルス感染症による影響が日々拡大している中で、対象会社の事業にどの程度の影響が生じるか、その影響がいつまで継続するかを合理的に予測することは難しく、売主・買主間でリスク配分について適正に合意することは容易ではない状況であると考えられます。 M&A取引の全般的な傾向としては、財務的な危機に陥る企業が増え、ディストレス型のM&A取引が増加すると思われます。また、このような状況下で資本リスクを可及的に回避するために、100%買収ではなく部分買収としたり、パートナーシップや業務提携等の資本を保有しない形での取引を模索する等、M&A取引の態様についても通常時と異なる検討が必要になる場合もあると思われます。 以下では、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた、我が国のM&A取引における主な留意点について説明します。

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