母のために耐えた虐待だったのに…呪縛が解かれ気づいた「我慢しない」人生 「あなたは絶対悪くない」
高校生で実家を出るまでの間、継父からの身体的・性的虐待を受けた女性を救ったのは大好きなバンドのとある歌詞でした。部活から自宅に帰るまでの間の不安な気持ちを忘れさせてくれたその瞬間を、イラストレーターのしろやぎ秋吾さん(@siroyagishugo)がマンガにし、記者が取材しました。 【マンガ本編はこちら】セリフのない情景描写が心揺さぶる 母のため耐えた虐待だったのに…呪縛が解かれ
虐待が待つ家への帰路、聴いていたのは
【この企画は、インスタグラムやツイッターを中心に作品を発表している、イラストレーターのしろやぎ秋吾さん(@siroyagishugo)との共同企画です。「10代のときにしんどかったこと、どう乗り越えましたか?」とSNSでエピソードを募り、しろやぎさんがマンガ化したエピソードの中から記者が取材を進めています。】 山口県在住の女性・魚田コットンさん(ペンネーム、31)は、母親の再婚相手である義理の父から性的・身体的虐待を受けていました。 小学生の頃から受けていたそれらの虐待は、高校を卒業して実家を出るまで続きました。 「死にたい」という気持ちを抱えていた高校時代、魚田さんを支えていたのは、当時大好きだったバンド・RADWIMPSでした。 部活を終え、継父がいる自宅に戻るまでの不安な帰り道、イヤホンから流れるこの歌詞を何度となく聴いていたといいます。 《いま僕が生きているということは いま僕が幸せだということ》 ――RADWIMPS「最後の歌」作詞・作曲 野田洋次郎 「この曲を聴いていたら、「私はまだ愛想笑いでも笑えるし、それなら幸せなんだろう」と思えました。自分に言い聞かせているような感じでした」
「母親のために我慢する」
実家にいる間は「どよんとした時代だった」と振り返る魚田さん。 暴力は魚田さんの母親に及ぶこともありましたが、自分に向けられる暴力や性的虐待も含めた家庭の状況を、誰かに相談するようなことはありませんでした。 「元々は母子家庭。義理の父とお母さんの間に子どもが産まれてからは『自分が原因でまた離婚してしまったら…』と思うと、なにも言い出せませんでした」 その頃から魚田さんには「母親のために我慢する」という意識が深く根付いていきました。 それに、魚田さん自身、そもそも悩みを打ち明けるのが苦手なタイプで、周囲の友だちからも明るいキャラクターだと思われている節がありました。 そんなキャラクターを崩せないという思いもあり、友だちとの会話はいつも学校生活のことやマンガ、テレビの話だけ。 「そもそも他人を信用していなかったのかもしれません。言ったところで解決するわけじゃないし、と思っているところもありました」 そんな魚田さんを支えていたのがRADWIMPSの音楽だったのです。