なぜ悪質タックルをした日大選手は善悪を判断できずに暴走したのか?
「アメリカのカレッジフットボールの世界では、リーグが練習時間や年間の活動時間を制限しています。しかもコーチはプロです。例えばフロリダ州立大のアメリカンフットボール部では、その限られた練習時間内に、いかに効率的なトレーニングを行い、戦術を磨くかということが先鋭化されています。メンタルトレーニングに関しても時間を割きます。夢や目標を達成するために何をどうすればいいか、学生スポーツの意義とは何かをコーチングしていけば、必然的にスポーツマンシップというものを理解するようになってきます。日大アメフット部の内情をよく知りませんので、あくまでも一般論としてですが、前近代的なスパルタ、間違った根性論がはびこるチームでは、しばしば、こういったメンタルに起因する問題が起きるのです」 実は、何十年も前から日本の多くのアメフットの強豪校の指導者たちは、毎年のようにアメリカの名門校などに留学して、戦術だけでなく、コーチング、チームマネジメントから、そのリクルート手法までを学んで持ち帰り、チーム強化につなげてきたという歴史がある。立命大のように、全米の大学に学び、クラブハウスやトレーニング施設などの環境までを整えたチームもある。いわゆるインテリが多く、どちらかと言えば学生アメフット界は、古い体育会系の根性論とは一線を引いてきたという傾向があったのだが……それにもチーム差があったのも事実である。 日大の悪質タックル問題が、なぜ起きたかの原因究明は、あらゆる角度から徹底して行わねばならない。関東学生連盟だけに任せるのでなく、全日本協会のレベルで調査、議論を行う必要があると思う。ひいては、それが、日本の学生スポーツ界が抱えている課題や、悪しき伝統を一掃するための重要な問題提起になるのかもしれない。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)