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【今、伝えたいこと】日本唯一のNHL選手・福藤豊の叫び 進歩なきマイナー競技者へ「選手任せは続かない」

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THE ANSWER

“アジア人”のヒエラルキーを感じたNHL、練習すらできない立場から這い上がった

 強化面の課題の一つは、代表活動が少ないことだという。「日光アイスバックスの福藤豊として活動することはあっても、代表の時期に『アイスホッケー日本代表の福藤です』と背負いながら仕事をすることはまずない。代表レベルで活動をしていくことも必要」。イベントでも、メディア出演でもいいだろう。できることはあっても、各チームの代表強化への協力姿勢がしっかりしているわけではないという。  メジャー競技でない限り、今や世界で活躍しなければなかなか日の目を見ない傾向がある。錦織圭や大坂なおみ、八村塁、井上尚弥らプロ競技のほか、東京五輪種目で言えば桃田賢斗、張本智和、羽根田卓也、楢崎智亜などメダル候補が脚光を浴び、競技にも注目が集まる。団体競技だって昨秋は国民的大ブームが沸き起こり、世間のラガーマンを見る目が見違えるように変わった。“世界で勝てる”が一つのキーワードかもしれない。 「代表として戦う時間が長ければ強化にもつながる。若い選手をどんどん海外に出してあげる環境も必要」。代表戦が増えるだけでも経験の場が広がる。大学生、高校生を“飛び級”で日本代表や海外でプレーさせることも一つだ。ただし、福藤は「できることはたくさんある。でも、議論し合う場所もないというか、話し合っている部分も見えてこない」と訴えた。 “できない”ではなく“やっていない”という現状にもどかしさがある。選手の声を吸い上げる環境もないため、選手会発足も「僕が現役でいる間に解決したい問題」と視野に入れているという。  ただ、暗い話題ばかりではない。最近では、中学、高校年代から海外挑戦する選手も徐々に出てきた。その一人が16歳の安藤優作だ。1月のU20世界選手権に“飛び級”で出場したFW。今季から16~20歳で構成される米ジュニアリーグ、USHLの「ヤングスタウン・ファントムズ」でプレーする新星に、福藤も期待している。 「NHLのドラフトにかかるんじゃないかと言われている。シュート、パスのセンスがズバ抜けて凄い。サイズは小さいけど、スマートにプレーしながら結果も出している。そういう選手が向こうで結果を出してくれると、いい勇気を与えられるし、日本人のお手本になる。『日本代表を強くするために』と言って海外に出る熱い選手が増えてきた」  平野裕志朗、寺尾勇利など1995年生まれの2人もNHLを目指し、海外の下部リーグに挑戦中だ。福藤がロサンゼルス・キングスでNHLデビューを果たしたのが2007年1月。2人目の日本人NHL選手は現れていないが、少しずつ近づきつつある。  自身が米挑戦を決めたのは18歳だった。高校卒業前に初めて見たフル代表の世界選手権。日本リーグを見て育った青年は、外の世界を知った。「こういう世界もあるんだ」「高いレベルでやってみたい」。幼い頃に日本リーグに抱いたものと同じ憧れの思いで海を渡った。  02-03年から3部相当のECHLでプレーし、世界最高峰のNHLを目指した。右も左もわからぬまま単身で飛び込んだ戦場。言葉の壁、「自分を前面に出す」という文化の違い、“アジア人”というヒエラルキー、練習すらさせてもらえない第3GKの苦悩を味わいながら、遠回りを繰り返した。 「少ないチャンスでどう自分を出していけば、このチームに認めてもらえるのか。模索しながらやって、ようやくチームメートとして受け入れられた瞬間を肌で感じた。自分で打破していくしかない。凄く貴重な体験でした」  米国は結果を出せば、素直に実力を認めてくれる場所だった。もがきながら階段を上ってNHLデビュー。4試合に出場したが、自己評価は「全くですよ」と苦笑いの奥に悔しさを滲ませる。本場で結果を残すために足りなかったことは何だろうか。後輩たちに同じ轍を踏んでほしくはない。 「NHLに行ったことが評価されがちですが、僕はそこで結果を出すという思いでずっと戦っていた。それを達成できなかったのは凄く残念だし、僕自身はアメリカで成功したとは思っていない。だから凄く悔しい。やはりいろんなことを知らな過ぎた。アメリカのホッケーってどんなものだろうと思っていて、行ってみるまでわからなかった。初めて知ったのが18歳。もっと早い段階でそういった環境が自分の頭の中にあれば、将来も変わってくると思う」  一概に海外に出ればいいというわけではないが、早くから環境やレベルを知れば、やるべきことが見えてくる。

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