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「出産したら競技は無理。そんな声に負けない」苦しみ乗り越えたママ選手・高木エレナの挑戦

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REAL SPORTS

地方では初となるJISS(国立スポーツ科学センター)と連携しながらの「産後復帰プロジェクト」を経て、昨年、見事現役復帰を果たした三重バイオレットアイリスの高木エレナ。出産後、体重が十数kg増えていた状態からスタートし、彼女はいかにしてハンドボール選手として現役復帰を果たしたのか? そのプロセスにおける自身の葛藤、そして周囲のどのようなサポートが彼女の大きな支えとなったのか。いまだ女性アスリートが結婚、妊娠出産を境に競技をやめるケースが多い中、一人のトップアスリートの出産後から現役復帰までの道のりを追った。 (インタビュー・構成=木之下潤、写真提供=MARK THREE DESIGN)

産後復帰をどのようにプランしていったのか?

――妊娠期間中は「ゴールキーパーコーチ」という肩書で活動されて、昨シーズン産後復帰してからは選手兼コーチ、それとも選手一本のどちらで活動したのですか? 高木:昨シーズンは選手一本でした。 ――産後復帰に向けて体重を戻すことはもちろん、運動能力を妊娠前の状態に戻すことも大事です。2019年5月にJISS(国立スポーツ科学センター)のスタッフが三重に来て、クラブのトレーナー、栄養士、産婦人科の先生と「産後復帰」のことを話し合ったと聞きました。 高木:JISSのスタッフ、クラブのトレーナーと栄養士、産婦人科の先生に集まってもらい、復帰に向けた話が行われました。その中で、こういう事例を地域でつくることは大切だということになりました。私自身も初めての経験ですが、きっと地域の女性アスリートで「ママさん選手として現役を続けたい」という人もいると思います。もし手厚い支援が受けられなくても、「どういうことをすればいいか」がわかれば、女性アスリートが現役を続けられる間口が広がると思ったので、そこに対して何か貢献できればいいなと考えました。 ――おそらく「やりながら」でしか産後復帰のプログラムは組めないような気がします。子どもを出産したあとに動き出したプロジェクトということで間違いないですか? 高木:出産後、競技復帰の相談をクラブにしてから動き出したことです。JISSは東京にあるので、私が三重と東京を行き来することなどを現実的に考えていく過程で「難しい」という結論に至り、そこから実際に三重を拠点にトレーニングを開始しようとしたタイミングで、内々のこととして「産後復帰プロジェクト」の話し合いが持たれた形です。 ――一度、子どもが生まれてからの流れを時系列で確認させてください。 高木:出産は、2018年12月。JISSとの話し合いは、2019年5月。そして、実際に競技に復帰してチームに加わった本格的なトレーニングを実施し始めたのは、2019年9月くらいからです。なので、5月からの数カ月はその準備期間としてクラブのトレーナーと二人三脚で軽くジョギングなどはしていました。初めは体重が十数kg増えていたのでヒザが痛くなって10分くらいでやめました。だから、自重のスクワットくらいからスタートし、階段を上ったりして体を運動に慣らしていくことを目的に少しずつハードルを上げていきました。 ――なるほど。クラブのトレーナーとトレーニングを始めた時、体の状態はどんな感じだったのですか? 高木:すごく体が硬くなっていました。股関節は可動域が狭くなっていた感覚がありました。もともと痛みを抱えていたのですが、歪みがあって日常生活でも腰痛が出たりしていた状態でした。 ――思うように体が動かない。妊娠、出産にあたって体の内部でどんな変化が起こったのか知りたいです。 高木:頭の中のイメージではできているんですけど、実際の体はスローモーションでできていない。例えば、自分ではキレイにスムーズに走っているつもりなんです。でも、ビデオ撮影した映像を確認すると、腕の振りかおかしかったり、イメージと体の動きのリズムが合っていなかったりして自分でもビックリするくらい恥ずかしい走り方をしていました。現実では、ドスドスしながら走っていて、でも自分の中ではキレイに走れているんです。あとは、体は重い感覚がありました。ずっと動いていなかったので、体がどう機能したらいいのかを忘れているというか、そんな感じですね。 ――イメージはずっと妊娠前から継続しているけど、体が一度記憶を忘れてしまっていて慌てて動いているみたいな。 高木:そう、そんな感じです。ゴールキーパーとして立った時も「いつもここにいたら反応できてシュートを止められるのにダメだった」みたいなことは本当に多かったです。 ――産後復帰にあたり、トレーナーと一緒にどんなメニューをこなしていったのですか? 「5分走って疲れていた」くらいなので、どんな段階を踏んだのか、と。 高木:まず、体重が増えたので減らしていくことが一つの目標でした。お腹の中に子どもが10カ月間いて、まったく力を入れずに過ごしていたので、体の中身のところから取り組まないといけないなと思っていました。また走ってみると思ったよりもヒザなどに負担がかかったので、バイクを5分、7分、10分という流れで徐々に時間を増やしながら少しずつ筋力を取り戻す作業をし、そこから走ることにつなげていきました。

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