知事が中止検討、島根の聖火ランナー「すぐにでも走りたい」リレー開始に複雑な思い
東京五輪の聖火リレーが25日、始まった。中止が検討されている島根県のランナーたちは、トーチを手に笑顔で走る福島県の走者の姿を目にし、「晴れ舞台で走りたい」との思いを新たにする一方、開催が不透明な現状に複雑な思いをのぞかせた。 丸山達也知事が新型コロナウイルスの感染拡大を封じ込められない政府や東京都の対応を問題視し、2月17日に聖火リレーの中止検討を表明した島根県。「4月半ばまで」とする判断時期に向け、開催可否の検討を進める。一方で、5月15、16日に津和野町を出発地し、松江城(松江市)を目的地とする14市町村(総距離34・3キロ)で179人が走るコースを想定し、警備や式典会場設置のための準備も並行して進めている。現時点で県実行委員会が選出した53人で辞退者はいない。 リレーのスタートを心待ちにしていたランナーは、ニュースにくぎつけになった。川本町因原の保育士佐々木成美さん(31)は「会員制交流サイト(SNS)で福島県のランナーが笑顔で走っている姿を見たら、すぐにでも走りたくなった」と興奮気味に話す。その一方で「知事の気持ちもわかるが、やるかやらないか早く決断してほしい」と開催予定日まで2カ月を切っても開催の有無が決まらない現状に不安を募らせた。
安来市広瀬町広瀬の無職岩田仁志さん(63)も福島のランナーに刺激を受けたうちの一人。テレビで笑顔で走る走者を見て、「あのくらいのスピードで走ればいいんだな」と、自分が走る姿を思い浮かべた。 中止の可能性があることが頭から離れることはないが、地元住民から「きっと走らせてもらえるよ」「頑張って」と声をかけられるのが何よりの励みという。 「いよいよ始まったんだな」と話す奥出雲町体育協会理事長の佐伯君雄さん(67)=奥出雲町下横田=は「準備はしておかないといけない」と自分に言い聞かせて、中止検討が表明された後もジョギングは欠かさない。 鳥取県は、警備などの経費を節減し、感染症対策に充てることを理由に県外からの関係者の人数や式典の規模を縮小することを検討している。大会組織委員会と交渉中で4月上旬に結論を出す。