なぜティム・クックは当時「潰れそうなアップル」に入社したのか?
アップルのティム・クックCEOは、英国時間12月11日にロンドンを訪問し、アップルがロンドンおよび英国に注力し続ける姿勢を改めて強調した。この5年間でアップルは英国に220億ドル(約3兆3500億円)を投資してきた。 この日クックは、ロンドン本社(バタシー地区)近くにある青年支援センター「カイアスハウス」で若者たちと対話を行い、自身の歩みやアップルの最新機能について率直に語った。 筆者はこれまでも、クックが人々と直接交渉する場面を目にしてきた。彼は聴衆の「わあ、本人だ!」という高揚感を、自然で誠実な態度で人々をくつろがせるエネルギーへと変え、相手をより深く知ろうとする稀有な才能を持っている。 筆者がクックに、こうしたイベントに参加する意義を問うと、彼は 「何かを社会にお返しできるということには大きな意味がありますし、将来企業や組織、政府を率いることになる若者たちと直接つながり、彼らが何を考え、どんな夢や希望を持っているのかを知ることができるのはとても有意義です。若い世代とのつながりを保つことは、個人的な面でもビジネスの面でも非常に重要なのです」と答えた。 参加した若者から、自身のキャリアの始まりについて問われると、クックはコンピュータへの興味について語った。彼がコンピューティングに本格的な関心を抱いたのは高校ではなく大学に入ってからで、人々を助け、つなぐ大きな可能性があると気づいたときにその情熱が芽生えたという。 「自分が最も好奇心をかきたてられるものを見つけてください。すぐに『これだ!』という瞬間が来なくても、心配しなくて大丈夫です」と、主にティーンエイジャーから成る聴衆に優しく語りかけた。 ビジネスで成功する秘訣は何かと問われると、クックから多くのアドバイスがあった。過去の業績に安住せず、常に前を見続けること、有能なチームに囲まれることなどを挙げた。
「何もかも完璧なことはない。人々からのフィードバックを宝石のように大切に扱い、自分たちの技術を磨き上げていくことが重要だ」
また、クックは1997年にアップルへ入社した当時を振り返った。当時のアップルは破産寸前と見なされていたという。デル・コンピュータのCEOであるマイケル・デルは、「アップルを畳んで株主に資金を返すべきだ」と公言していた。 「彼が他の業界人と違っていたのは、みながそう考えていた中で、それを公に口にしたことでした」とクックは語った。 それでも彼がアップルに惹かれたのは、「スティーブ・ジョブズの目には特別な輝きがあり、周囲が右に向かう中で、彼だけが左に向かおうとしていたからです」と、その理由を明かした。 アップルのAI「Apple Intelligence」について問われると、クックは 「実は本日、iOS 18.2をリリースしますが、ぜひ早めにアップデートしていただきたいのです。そこにはApple Intelligenceに関わる多彩な機能が含まれています。たとえば写真の補正や文章作成ツール、そしてChatGPTとの連携などです。多くの機能が詰まっていますが、優れている点は、これらが皆さんが日常使うアプリにシームレスに統合されていることです」と述べた。 さらにクックは続けた。 「それにプライバシーにも配慮しています。処理は端末上あるいはプライベートなクラウドで行うという、非常に珍しい手法をとっています。今後さらに機能は増え、ますます良くなっていきます。人工知能は水平的なテクノロジーで、いずれ生活のあらゆる面に行き渡るでしょう。まるで個人アシスタントのように、時間のかかる事前準備を肩代わりしてくれることで、皆さんは好奇心を追求し、創造し、自分の情熱を深めるための時間をより多く持てるようになるのです」 クックがかつて出会った開発者の1人が「常にイテレーション(継続的な改善)を続ける必要性」を語っていたという話を受けて、筆者がクックにアップルも同様かと尋ねると、彼は「その通りです。何もかも完璧などということはありません。常に改良の余地があり、人々からのフィードバックを宝石のように大切に扱い、時間とともに自分たちの技術を磨き上げていくことが重要なのです」と答えた。