代表強化は高校サッカーかJユースか?
ベスト16に進出したW杯南アフリカ大会直後。全国高校選手権の優勝経験ももつ強豪校のベテラン監督から、代表23人のうちJクラブのユース出身者がわずか4人だった点に関してこんな警鐘を聞いた。 「Jリーグの発足から17年もかけて4人ですよね。あちらは年間で1億円以上をかけるプロの養成所で、こちらは教育の一環。その意味では、Jクラブの育成は遅れている、まだまだ甘いと言わざるを得ない」 ブラジル大会では、FCみやぎバルセロナの香川真司を含めて、ユース出身者は10人に達した。しかし、主軸を担ったのは本田やキャプテンの長谷部誠をはじめとして、依然として高体連の出身選手だった。 こうした状態を踏まえて、志波総監督は高校サッカーの在り方を説く。 「サッカーを取り巻く環境でいえば、指導者の経験値を含めて、Jクラブのほうがちょっといいかな。ならば、我々は何が違うかと言えば、繰り返しますけど人を作るということ。人間の一生のなかで(高校サッカーは)ほんのわずかな部分だけですよね。それがどのような形で次へつながっていくのか、ということを見すえた指導が大事であり、優勝というものは後からついてくればいい。卒業する3年生もいろいろな形でサッカーを続けていってくれるはずですし、私はそれでいいと思っています」 東福岡の3年生でJクラブに内定している選手はいない。キャプテンの中村は明治大学へ進学。大勝の口火を切った三宅は鹿屋体育大学へ進み、高校の3年間で培った心の強さを糧に「大学の途中でもプロになれれば最高です」と新たな夢を思い描く。 最上級生として新チームを引っ張る藤川は、2年間で体重が15kgも増えたという。2020年の東京五輪で活躍する自分自身の姿を想像しながら、「卒業後はブラジルでサッカーをする夢もあります」と屈託なく笑う。 世代ごとのトップ選手が、Jクラブの下部組織に集まる傾向は年を重ねるごとに強くなっている。たとえば過去6度の優勝を誇る東京勢の決勝進出が17年ぶりだったことと、首都圏にJクラブが集中している現状は決して無関係ではないだろう。 それでも、サッカー人生を逆算したうえで、高校サッカーでしか得られないモノを求めるホープたちが強豪校や名門校の門を叩く新たな流れもまた確実に生まれている。 (文責・藤江直人/スポーツライター)