『銀魂』万事屋声優の15年 “仕事の危機”すら感じた強烈キャラクターとの旅路
■“ボケ&ツッコミ”キャラ定着で仕事にも影響 強すぎる個性ゆえの“危機感”
――まさに収録現場も仲間で力を合わせる“万事屋メンバー”だったのですね。 【杉田】 『銀魂』は別録りが少ない現場で、スタッフさんのこだわりとして『万事屋は漫才のやり取りだから、ボケとツッコミを離してはいけない(別録りしてはいけない)』考えがあったようです。漫才やコントをしているかのような作品ですので、“笑いの呼吸”というものが大切。キャストの掛け合いが多い作品なので、別録りが少なかったのは作品にとって良かったと思います 【阪口】 これは演者側として、とてもありがたいことで、せりふのテンポ感が全く違うようになります。ボケのせりふを言ってもツッコミがないと演者の気持ちも乗らないので、『銀魂』は細かいスタッフさんたちのこだわりで良くなった作品なのかも知れません。 ――それぞれ個性豊かなキャラクターを15年間演じてきました。ご自身の個性にも少なからず影響を与えていそうですが、感じたことはありましたか。 【杉田】 銀時は「面白くしよう」と演じないことに気を付けてきました。独りよがりの感情をぶつけてしまうことになるからです。ただ、コメディーな演技に慣れ過ぎて、『「面白くしてやろう」という野心のようなものが芝居に出ているから抜いて!』と別作品で言われたことがありました。『銀魂で慣れすぎちゃったでしょ』とも言われて、そんなことないのにな~と思いましたが(苦笑)。意識しないところでキャラの影響を受けていたみたいですね。 優しい父親が少しボケるシーンだったのですが、『銀魂』風の笑いの圧が強かったみたいで、ディレクターさんに『狙い過ぎているから』と言われた時は、無意識なことでしたので、嫌な汗が出て恐怖を感じました。なぜなら今後、コミカルな役を演じる際、『銀魂』的な要素を自身で修正できないと、『ほかの作品でコメディーをやる時どうすればいいのだろうか』と迷ってしまう危機感を覚えたからです。声優として、現場監督からの指示に対応することができなければ、“人の指示を聞かない人”“相手と呼吸をあわせることができない役者”になりますから。その時に強く『これはよくない…』と思いました。キャラクターを通して人を笑わせると、段々『次は俺が笑わせてやろう!』となりがちですが、そうなったら役者として『終わり』だと考えています。なので別録りではなく、万事屋3人で一緒に収録する機会が多くて本当によかったと思います。自分の立場を確認できるからです。 【阪口】 新八はツッコミをする場面が多いので、日常でも新八のようなツッコミを求められたりします(笑)。元々僕はそのようなキャラクターではないので、演じたことで「あ~、新八のような人に見られるようになったのか」と思いました。作品に出合う前は、ボケでもツッコミでもない、ニュートラルな役を演じる機会が多かったので、“ツッコミ”キャラが定着したのは『銀魂』の影響を強く感じました。自身が『新八に引っ張られた』というのではなく、『周囲が僕を新八のような人だと思われているのか』と思います。周りの目の変化を感じた15年間でした。 【釘宮】 かわいいキャラクターを演じる機会が多かったですが、神楽を演じて“汚い言葉を言う”役が増えたことはないですよ(笑)。叱るキャラクターを演じる機会が増えたように感じたこともありましたが、私自身はキャラクターの影響を感じてはいません。…汚い言葉を言うことに抵抗感はなくなったと思いますが(笑)。(隣から杉田・阪口「よくない! よくない!」「うっうっ、ごめんよ~」) 抵抗感があったら『銀魂』の神楽を演じ続けることができなかったと思いますし、いつでも体当たりでぶつかれる作品に出会えて幸せな15年間でした。