『銀魂』万事屋声優の15年 “仕事の危機”すら感じた強烈キャラクターとの旅路
1月8日に公開される人気アニメ『銀魂』のラストを飾る映画『銀魂 THE FINAL』。「終わる終わる詐欺」と話題となった原作漫画も2019年6月に完結しており、今回の映画でアニメも幕を下ろす。公開を前に主人公・坂田銀時役を務めた杉田智和、志村新八役の阪口大助、神楽役の釘宮理恵にインタビューを実施。テレビアニメが初めて放送された2006年4月から約15年間演じたキャラクターや作品への思いを聞いた。 【画像】木刀を持ってイケメンな銀さん…映画の場面カット&キャスト集合写真 ■両親より絆深めた15年 3人で作り上げた“万事屋”「1人で演じられない」 ――何度も「終わる終わる詐欺」を繰り返してきた『銀魂』ですが、今回の最終章を“最後の物語”と信じることは難しいという声も聞きます。演者側はどのような心境で収録に臨んだのでしょうか。 【杉田】 音響スタッフの方から最終章ということで『悔いはありませんか?』と聞かれましたが、『ないですね』と即答しました(笑)。それは、最終章を迎えたといっても作品が消えるわけではなく、生き続けるからで、「終わった」という実感が僕にはまだありません。また、僕は学校の卒業式で泣かないタイプで「お前は寂しくないのか!」と怒られる子でした。自分が演じたキャラクターの誕生日を特別祝うこともしないので、「血が通っていないの?」と言われることもありますが、今回の完結に対して感動しないことは「悪いこと?」と思いますし、演じる身としてその感情は作品に「必要なのか?」と思うわけです。 【阪口】 映画の台本をいただいた時は「終わるんだ」と思いましたが、収録現場に行くと、いつも通りに始まり、終わっていきました。感慨深いということはありませんでしたので、いい意味で特別な感情はありませんでした(笑)。僕と新八という関係性は終わってしまうかもしれませんが、『銀魂』という作品は続いていくので、悲しい気持ちはありません。ただ、万事屋3人がそろう機会が減ることは寂しいと感じます。この15年間は間違いなく両親より会っているので(笑)。「この曜日のこの時間…」と収録スケジュールが生活習慣に組み込まれていたので、続けてきたものが消えるのは不思議な気持ちです。まだ、『銀魂』としての仕事は続くのですが、それが完全になくなったら、違う感情が生まれるのかも知れません。今は終わった実感がないです。 【釘宮】 終わってしまうという現実を直視したくないのか、「終わる」寂しさを感じないようにしているだけかも知れません。今は寂しい気持ちはないのですが、イベントでファンの方の声を聞いたら「みんな、ありがとう!」と感極まるかも知れません。 私泣き虫なので…(笑)。『銀魂』はいろんなコラボ展開がある作品ですので、終わったと言ってもキャラクターを遠ざけない距離感を保ち続けたいです。 ――15年間、同じキャラクターを演じ続けましたが、収録現場で印象に残っていることはありますか? 【杉田】 銀時というキャラクターは本音をなかなか見せないので、役作りの際は『どういう人間なのか?』を常に探っていました。背中と魂で語る男ですが言葉がないので、演じる側は不安でした。こちらから言葉を投げかけ続ける“芝居”という形で、15年間演じてきたので、この作品で彼の魅力が伝わればうれしい限りです。 【阪口】 15年間ですよね…。杉田君の銀時に対する向き合い方が、作品を良くしたと感じました。銀時の中の人が気張り過ぎていたら、独特な空気感にならなかったと思います。さまざまな主役の形がありますが、「銀時の中の人」という立ち位置から言葉・態度で示すのではなく、「銀時」として僕らを引っ張っていったと思います。強烈なリーダーシップと言葉で引っ張っていく主役もいいですが、それは『銀魂』には必要ではなかったので、作品の本質を杉田君は捉えていたと思います。杉田君のポジションとスタンスがうまくハマった15年だと感じています。 【釘宮】 杉田さんが銀ちゃんのことを「背中」でと言っていましたが、杉田さんもスタジオではそのような振る舞い方でした。本人から発信することはなく、見守る姿勢でしたね。作品、スタッフ、演者に対してのリスペクトを感じましたし、信頼感というのを言葉ではなく雰囲気で語っていたので、万事屋3人は絶妙な関係性だったと思います。また、キャスト間の距離感が近く、私たち万事屋の3人は一緒に収録することが多かったのですが、ゲーム収録の時は1人だったため、キャラの演じ方がわからなくなった時がありました。3人での掛け合いで作り上げてきたものなので、いざ、掛け合いをする相手がいないと「どのようなテンション、温度感で声を出していたのか?」と迷子になった記憶があります(笑)。「1人だと神楽を演じることができない」と真剣に悩んでいた時期もありました。