阪神74年ぶりのサヨナラ劇の裏に使命感
これで1点差。続くゴメスは、2ストライクノーボールと追い込まれながら吊り球のようなストレートをファウル。ボールだった。中日バッテリーは、同じ高めにもう1球、ボールとなる吊り球を続けたが、またもゴメスは、それを強引にスイングしてライト線ギリギリに運んだのである。 落ち場所と、詰まった打球が幸いして、それは絶好の同点タイムリーツーベースとなった。若い中日バッテリーの隙を逃さなかった昨季の打点王の積極性。何が何でも勝利につなげようした、その執念も、またゴメスの助っ人としてのプライドであり使命感だったのかもしれない。きっと、あとボール半個上にずれていれば、ポップフライに変わっていただろう。それが野球であり、僅差の勝負をわける重要なキビなのである。 和田監督は「嫌な流れだったが、粘り強く最後まで戦った。オープン戦の終盤から点がとれず、その流れ開幕に入って苦しんだが、ゴメスも4番の仕事をしたし、本当に粘り強かった」と、新打線を称えた。 最高のスタートを切ったが、阪神DCで評論家の掛布雅之氏は、これですべてが解決したわけではないと、警鐘を鳴らす。 「これで3番・西岡に対する雑音を巨人戦くらいまでは封じ込むことができると思うが、内容を見ると安心はできない。ゴメスは2本打ったが、インハイ、アウトローというボールに手を出していて不安が残る。下位打線が弱く、調子のいい鳥谷をポイントゲッターとしては使えていない。1点を追う初回に無死一塁から上本にカウント0-1からエンドランを仕掛けてファウルとなり、そのあと打たせて得点圏に送ることができなかったが、相手ベンチにバントを含めて、何をしてくるのかを考えさせるような作戦があっても良かったのではないか。上本に自分でカウントを作らせてからの仕掛けでも遅くはなかったと思う。一方の中日は、下馬評は低いが、4番のルナがチーム貢献の右打ちをしたり、3番の森野がバントを決めたりと、つなぐ意識が随所に見られて、あなどれないチームだと感じた。ただ開幕戦は143試合分の1ではない。その試合を逆転サヨナラでつかんだ阪神が得たものは大きい」 新3番とゴメス、そして首位打者マートン。それぞれの使命感が交錯して実現した阪神の逆転サヨナラ劇。 「明日勝ってこそ今日の試合が生きてくる」と西岡が言えば、和田監督も「この流れで明日もいきたい」と声のトーンを上げた。28日の第二戦の先発は岩田だ。